(写真はイメージです/PIXTA)

戦後の人口増加から一転、人口減少期へと突入した日本。2020年を中心とする前後5年間の性・年齢階層別の人口構成の変化について、ニッセイ基礎研究所の井上智紀氏が考察します。

3―都道府県別の差異

1.2015年から2020年の変化

全体での増加率が高い高齢層について都道府県別にみると、80歳以上の増加率は埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府で2割を超えて高く、特に埼玉県の男性では37.9%と増加率の高さが目立っている。同様に70歳代では栃木県、石川県、滋賀県、香川県で2割を超えて高くなっている。

 

また、50歳代についてみると、一都三県と愛知県、大阪府では10%以上増加しており、特に東京都(18.5%)、神奈川県(17.6%)で大きく増加する一方、北海道、東北、栃木県、新潟県、福井県、和歌山県、広島県を除く中国、四国、福岡県と沖縄県を除く九州では減少しており、特に秋田県、山形県、宮崎県、鹿児島県では全体での減少割合が10%を超えるなど、顕著に減少している。

 

減少幅が大きい60歳代についてみると、富山県、京都府、大阪府では20%以上の減少と全国平均を大きく上回る一方、岩手県、宮城県、山形県、福島県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県では減少率は10%に満たず、沖縄県では逆に4.3%増加している。

 

全国では減少率が10%に満たない20歳代以下についてみても、青森県、岩手県、秋田県、徳島県ではすべての層で10%以上と減少率が大きくなっている一方、東京都では10歳未満、20歳代で、千葉県、神奈川県、大阪府では20歳代で増加するなど、地域差が生じている様がみてとれる。

2.2020年から2025年の変化

全体での増加率が高い高齢層について都道府県別にみると、80歳以上の増加率は埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県など、2割以上の増加が見込まれている府県がある一方、岩手県、秋田県、山形県、島根県、鹿児島県では増加率が5%に満たない。

 

同様に全国では増加率が高い、50歳代についても同様に、岩手県、山形県、福島県、山梨県、和歌山県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県では増加率が5%に満たず、青森県、秋田県ではむしろ減少する見込みとなっている。

 

一方、団塊ジュニア世代が50歳代になることで大きく減少することが見込まれる40歳代についてみると、岩手県、山形県、東京都、鳥取県、徳島県、長崎県を除く九州・沖縄では10%未満の減少率に留まっている。

 

30歳代以下についてみても、東京都と沖縄県では10歳代が増加の見込みとなっているほか、滋賀県、京都府、岡山県、徳島県、香川県では20歳代の増加率が5%を超えて高くなっているなど、今後の5年間においても地域や世代により変化の方向は様々であることがわかる。

 

我が国全体としては人口減少と高齢化が同時に進んでいることから、市場環境を考えるにあたっても高齢者市場を除く多くの市場は今後も縮小が避けられないものとの前提で捉えがちであるように思われる。しかし実際には、人口の変化は出生や死亡といった人口動態以外に社会移動によっても生じることから、地域や世代により増加・減少の方向性や変化の大きさも様々である。

 

また、そうした変化の背景要因もそれぞれに異なっていることは想像に難くない。環境変化への対応を検討していくにあたっては、こうした地域ごとの差異にも目を配っていくことが肝要ではないだろうか。

 

 
 

 

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年12月26日に公開したレポートを転載したものです。

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