日本の「時間当たりの労働生産性」は下がり続けている
残業とは環境によって「基本給を補填する機能」とも、「評価を獲得するために減らすべき課題」ともなり得るものです。そして、これからの時代において、私たちは残業を後者として捉えねばなりません。理由は先の「沈む中流」の記事内容そのものです。残業に基本給を補填する機能があるとみることのリスクが、コロナ禍により露呈しました。
さらに深刻なのは、いま、他国と比べて日本の時間当たりの労働生産性がどんどん下がってきていることです。以下に、シンクタンクの日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2021」のデータを抜粋します。
日本の時間当たり労働生産性は、49.5ドル。OECD加盟38ヵ国中23位。
OECDデータに基づく2020年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、49.5ドル(5,086円)。
米国(80.5ドル/8,282円)の6割の水準に相当し、OECD加盟38ヵ国中23位(2019年は21位)だった。
経済が落ち込んだものの、労働時間の短縮が労働生産性を押し上げたことから、前年より実質ベースで1.1%上昇した。ただし、順位でみるとデータが取得可能な1970年以降、最も低い順位になっている。
日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」2021年12月
原因はいうまでもなく、これまでの日本の残業のあり方です。
これからの残業への向き合い方
残業を減らすためには、残業を減らさざるを得ない環境が必要となります。先述のとおり、同じ量と質の業務をこなした2人のメンバーがいる場合、そこにかけた労働時間が少ない人のほうを評価するのです。これを厳格に運用するためには、仕事の量と質が客観的に判断できるようにしなければなりません。
多くの組織がいままで是としていた、残業は基本給を補填する機能であるという捉え方をしていると、メンバーや組織、ひいては国そのものの力が弱まる一方です。ましてや、コロナ禍の現状では「給料=労働時間に対する対価」という常識も崩れてしまいました。いまこそ、残業を減らすべき課題ととらえ、業績給×生産性を評価対象とする仕組みへの変革が求められているのではないでしょうか。
入澤 勇紀
株式会社識学
営業1部部長 上席コンサルタント