(※写真はイメージです/PIXTA)

個人間での金銭貸借や慰謝料の支払い、取引先からの売掛金など、相手方と約束したお金が返ってこないときは、相手の資産の差押え(強制執行)を検討する形になります。しかし、相手の資産を法律上の手続を経ずに、強制的に奪うことはできないため(自力救済の禁止)、適切な手続きを踏む必要があります。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、給与の差押えについて加藤良丞弁護士に解説していただきました。

第三者からの情報取得手続と本件を踏まえての対応策

第三者からの情報取得手続

本件においては、債務者の給与以外に差し押さえるべき財産はないとのことでした。

 

しかし、近年法律改正が行われ、以下の3つの手続きが創設されています。

 

これらの手続をとることにより、第三者から情報提供を受けることが可能となり、債務者の新たな資産が発見される可能性があります。

 

上記の財産開示手続とは異なり、第三者から、直接、情報提供を受けられることがメリットになります。

 

(1) 不動産情報

 

ご相談者様のように、金銭債権に関する「債務名義」を有している場合には、その他の一定の要件を満たせば、東京法務局に対し、①相手方が名義人となっている土地又は建物の存否、②その土地・建物を特定するに足りる事項の開示を求めることができます。 これにより、相手方が所有する別荘、投資用不動産等が発見される可能性があります。

 

(2) 預貯金情報

 

ご相談者様のように、金銭債権に関する「債務名義」を有している場合には、その他の一定の要件を満たせば、銀行等を指定し、①債務者が有する預貯金債権の存否、②その預貯金債権を取り扱う店舗、③その預貯金債権の種別、口座番号及び額の提供を求めることができます。 これにより、相手方の預金が発見される可能性があります。

 

(3) 勤務先情報

 

①婚姻費用分担請求権・養育費請求権、又は②人の生命、又は、身体の侵害による損害賠償請求権(例えば、交通事故で怪我をした場合等)については、その他の一定の要件を満たせば、市町村等にⅰ相手方に対して給与の支払いをする者の存否、ⅱその者の氏名又は名称及び住所の開示を求めることできます。

 

しかし、上記①及び②の債権ではない、貸金債権を有するご相談者様は、本件手続により、相手方の勤務先を知ることはできないことになります。

 

本件を踏まえての対応策

以上のとおり、本件においては、財産開示手続の申立てを行うことが良いと思います。しかし、万が一、債務者が「財産開示期日」に出頭しない場合には、債務者の勤務先について別途調査を行う必要が生じます。

 

例えば、探偵を使って、勤務先を調査するということもありますが、これには一定の費用が生じます。

 

これを防止するためには、債務者と和解する際、債務者の財産状況に関する情報をできる限り、収集しておくのが良いと思います。

 

例えば、本件に即していえば、月3万円の支払を継続していくことが可能なのか判断するために、毎月の給料の額を裏付資料と共に教えて頂きたいと伝えることが考えられます。 これにより、給与明細を取得することができ、勤務先を把握することができると思います。

 

また、債務者としては、和解を望むわけですから、こちらの要求に応じないという判断をすることは、一般的には難しいと思います。

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