(※写真はイメージです/PIXTA)

環境的要因と遺伝的要因から最適な治療を導き、医療の質を向上させる新たな概念である「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」は、従来の標準化された治療方針では見落とされてしまう、遺伝情報や患者個々の出身地や生活歴などの背景を考慮した治療を行うものです。東大病院に勤務後、現在は年間10万人を超す外来患者が殺到する眼科病院の理事を務める眼科医・宮田和典氏が、次世代医療の要と成り得る「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」について詳しく解説します。

2つの調査結果を活用する方法

2つ目の調査は、2005~2006年にかけて行われた疫学調査で、正式名称は「沖縄県における緑内障疫学調査」、通称「久米島スタディ」です。

 

久米島スタディでも、沖縄県久米島の40歳以上の住民を対象に緑内障を始めとする眼の病気の有病率や失明の原因などを調べました。

 

久米島スタディでは緑内障の有病率を調べるために、多治見スタディと同じ緑内障の診断基準を用いています。そのため、2つの調査を比べることによって緑内障の有病率の地域差を比べることが可能になります。

 

また遺伝的観点から分けるのであれば、多治見スタディは本土日本人、そして久米島スタディは琉球民族が対象ということになります。

眼の形の違いは白内障の手術などさまざまな治療に影響

実は、眼の形の違いはさまざまな眼疾患の治療に大きく関与します。特に隅角が狭いと、白内障の手術にも非常に大きな影響を及ぼします。

 

白内障は眼の中にある水晶体が濁ってしまう病気です。初期には進行を遅くするために薬物治療を行いますが、病気が進行すると手術しか治療方法はありません。

 

濁ってしまった水晶体は薬物を投与しても元どおりに戻すことはできません。そのため手術では、濁った水晶体を取り除き、その代わりに眼内レンズと呼ばれる人工の水晶体を入れます。

 

この眼内レンズは、非常にたくさんの種類があり、患者の希望する視力などに合わせて、度数も細かく分かれているなかから、最適なレンズを選ぶ必要があります。

 

そして、どのレンズがその人にとって最適であるか、眼科医は精密な計算のもとに導き出します。その計算のベースとなるのが、眼軸長や前房深度などの眼の形なのです。

 

隅角を特殊な顕微鏡で調べてみると、狭隅角の人は、同時に浅前房であることが分かりました。

 

浅前房であるということは、眼の真ん中の空間が押しつぶされているようなイメージです。ごく簡単に説明すると、前房深度の浅い人は、眼が短く、眼が小さいといえます。

 

宮田 和典
宮田眼科病院 理事長
医療法人明和会 理事長

 

※ 本連載は、宮田和典氏の著書『診断治療の質を上げる ペイシェント・ベイスド・メディスン』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再構成したものです

診断治療の質を上げる ペイシェント・ベイスド・メディスン

診断治療の質を上げる ペイシェント・ベイスド・メディスン

宮田 和典

幻冬舎メディアコンサルティング

患者の出身地や食生活によって、かかりやすい病気、重症度が変わる――。 環境的要因と遺伝的要因から最適な治療を導く。医療の質を向上させる新たな概念「PBM」とは? 1990年代にカナダで提唱された「エビデンス・ベイスド…

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