相続手続きで使用する戸籍謄本の取得は、かなり大変…
生徒:先日、私の母が他界しました。いまから私が相続手続きをおこなわなければいけないのですが、「戸籍謄本」の提出が求められることが多くあります。戸籍謄本はどうやって取得するのでしょうか?
先生:戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場でしか取ることができません。本籍地の市区町村役場が遠い場合には、郵送で請求することができます。コンビニ交付に対応しているところもあり、その場合は、セブンイレブンやローソンなどのコンビニの機械から取得することができますね。
生徒:それなら、実家がある町の役場に行けばよいということですね。
先生:いや、それだけでは済まないかもしれませんよ。亡くなった方の戸籍謄本は、出生から死亡まで揃えなければいけないからです。
被相続人の出生→死亡まで、連続した戸籍謄本が必要
生徒:えっ、そうなんですか! でもなぜ、出生から死亡までの必要なのでしょう。
先生:それは、亡くなった人の相続人を調査して、相続人を確定するためです。生まれてから亡くなるまでの間、いつ身分に変動があったか、出生から死亡までのすべての連続した戸籍謄本を集めて調査しないと証明できないからです。結婚したり、離婚したりすると戸籍は変動しますし、養子縁組しても変動します。これらをすべて連続させて、死亡から出生まで遡っていくんですよ。
生徒:なるほど…。
先生:たとえご遺族が「相続人は私たちしかいない」と思っていても、戸籍を調べていると、会ったこともない人が養子に入っていたことがあるなど、想定外の法定相続人が見つかることもあります。そのため、亡くなった方の戸籍は、出生時の戸籍謄本まで遡って取得する必要があるんですね。
生徒:そういえば、私の母も養子に入っていたと記憶しています。その場合、どうやって出生まで戸籍謄本を集めるのでしょうか?
先生:お母様の死亡時の戸籍謄本から、その前、さらにその前とひとつひとつ遡って、「改製原戸籍謄本」「除籍謄本」を取り寄せる必要がありますね。
生徒:戸籍謄本を読めば、その前の戸籍がどこなのか、簡単にわかるものなのですか?
先生:まず被相続人の最後の戸籍謄本または除籍謄本をとります。それは簡単ですね。そこに記載されている内容を読み、その前の改製原戸籍謄本、除籍謄本の本籍地などを読み解いて、ひとつずつ順番に古い戸籍に遡り、本籍地の市区町村役場に請求していきます。そこから順次遡り、出生まですべての戸籍を揃えるという作業が必要になります。お母様の場合だと、お父様とご結婚する前は独身だったはずだから、最初はその時期の戸籍を遡ることになりますね。
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被相続人の「除籍謄本」「改製原戸籍」とは?
生徒:なるほど、大変そうですね…。私が、インターネットで戸籍について調べてみたところ、「戸籍謄本」や「戸籍抄本」、「除籍謄本」「改製原戸籍」など、難しい単語がたくさん出てきます。これらの意味がわからなくて…。たとえば、「除籍謄本」とはどのようなものなのでしょうか。
先生:亡くなった人の戸籍謄本は、配偶者や親族が同じ戸籍にいなければ、「除籍謄本」と呼ばれます。つまり、除籍謄本とは、記載されている人がすべて抜け出して誰もいなくなってしまい、閉鎖された戸籍の写しのことですね。
生徒:では「改製原戸籍」というのはなんでしょう?
先生:「改製原戸籍」は〈かいせいげんこせき〉と読むこともありますが、〈かいせいはらこせき〉と読まれることが多いんですよ。戸籍は、コンピューター化する前は紙で保存されていました。この紙の記録が「改製原戸籍」と呼ばれているんです。また、戸籍法の改正で、記録が新しい様式に書き換えられると、書き換え前の戸籍のことを、改製原戸籍というんだね。
被相続人の「戸籍抄本」「戸籍全部事項証明」とは?
生徒:「戸籍抄本」とはなんでしょうか?
先生:戸籍抄本とは、戸籍に記載されている方のうち1人の身分事項を証明するものです。戸籍謄本と戸籍抄本で証明される身分事項に違いはありません。
生徒:なら「戸籍全部事項証明」というのは…?
先生:戸籍全部事項証明とは、戸籍謄本のことです。名称が変わっただけですね。また、戸籍個人事項証明は戸籍抄本のことですよ。
生徒:私たち相続人も、戸籍謄本は出生まで遡る必要があるのでしょうか?
先生:相続人の戸籍謄本は、相続人が健在であることを示すためのものなので、出生まで遡る必要はないですよ。現在の戸籍謄本があれば大丈夫です。戸籍謄本でなく、戸籍抄本でもOKですよ。
戸籍謄本の取得に必要な書類と、かかる費用は?
生徒:市区町村役場で戸籍謄本を取るときに必要な書類はなんでしょうか?
先生:必要となるのは「戸籍交付申請書」と、運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどの本人確認書類、そして印鑑です。印鑑は認印で構いませんよ。
生徒:たくさん戸籍謄本を取得しなければいけないとなると、かなり費用がかかるのではないですか?
先生:もちろん、戸籍謄本の取得には費用がかかります。発行料金は、一般的に戸籍謄本が1通450円、除籍謄本が1通750円、改製原戸籍は1通750円です。ちなみに相続手続きには、住民票の除票や印鑑登録証明書、固定資産税証明書も必要になりますが、いずれも1通300円です。
生徒:それらを何部、取得すればよいのでしょう…?
先生:市区町村役場で手続きする前に、戸籍謄本の提出先が何カ所になるか、事前に確認しておいて、必要部数を数えておきましょう。金融機関、法務局、税務署など、複数の提出先があるので、少し余裕を持って取得しておいたほうがいいですね。
遠方の市区町村役場に、郵送で申請する方法
生徒:遠方の市区町村役場に戸籍謄本などを郵送で申請する場合、どうすればいいのでしょう?
先生:郵送で戸籍謄本を取り寄せるときは、「戸籍交付申請書」に、本籍地、戸籍筆頭者、亡くなった人の氏名を正確に書きます。使いみちは「相続手続き」としてください。備考欄など具体的に説明できる場合には、「被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要」と記載すればいいですね。
生徒:郵送で申請する場合、手数料などの費用はどのように支払えばいいのでしょう?
先生:郵送の場合、手数料は「定額小為替」を郵便局の窓口で買い、指定受取人などの記載欄には何も書かず、払渡票は切り取らずに、郵便局から受け取ったままの状態で送ります。それに加え、切手を貼って返信先を記入した返信用封筒も同封する必要があります。
生徒:なるほど! 市区町村役場まで訪問するのは大変ですから、郵送のほうがよさそうですね。
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【相続】戸籍謄本の種類、記載内容、入手できる場所や費用を徹底解説
戸籍謄本の代わりになる「法定相続情報一覧図」
先生:相続手続きをおこなうとき、金融機関や税務署や法務局など、戸籍謄本を提出する公的機関がたくさんありますが、法務局の「法定相続情報証明」をもらうと便利なんですよ。ご存じですか?
生徒:いえ、知りません。法定相続情報証明ってなんでしょう?
先生:相続人が戸籍謄本を集めて「法定相続情報の一覧図」を作成し、それに被相続人の住民票の除票、相続人の現在の戸籍謄本を一緒に法務局に提出すると、法務局が無料で認証印を付けてくれるんですよ。この法定相続情報一覧図を法務局で作ってしまえば、無料で必要な枚数を取得できるので、同時並行して相続手続きをおこなうことができるようになります。
生徒:それは便利ですね! 私も法定相続情報一覧図を作るようにします。ありがとうございます。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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