(画像はイメージです/PIXTA)

公的年金は年6回、偶数月に〈2ヵ月分を後払い〉されています。そのため、相続が発生した日によっては、未支給の年金が残されていることがあるのです。この年金は、相続人が請求することになります。年金受給者の死亡届の提出の方法と、相続時に支給されなかった年金の請求方法を見ていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

公的年金は、年6回「後払い」で支払われている

生徒:先日、私の母親が他界しました。年金に関する相続手続きについて教えていただけますか?

 

先生:公的年金は、年6回に分けて支払われるということは知っていますね。支払月は、2月・4月・6月・8月・10月・12月。それぞれの支払い月には、その前月までの2ヵ月分の年金が支払われます。一般的には、支払い月の15日で、たとえば4月15日に支払われる年金なら、2月と3月の2ヵ月分ということです。

 

生徒:年金は後払いなんですね。

 

先生:年金をもらっていた人が亡くなったときは、年金を受け取る権利がなくなります。これが「失権」です。

 

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公的年金の受給権者が逝去…必要な手続きと提出書類

生徒:すると、死亡届を年金事務所に提出する必要はありますか?

 

先生:そうですね。日本年金機構にマイナンバーが登録されていない場合、年金の支給が続けられる可能性があるので、「受給権者死亡届」を、市区町村役場か年金事務所へ提出して、年金の支給を止めなければいけません。「受給権者死亡届」の用紙はWEBサイトからダウンロードすることができます。もし日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合は、原則として届け出する必要はありません。

 

生徒:「受給権者死亡届」はいつまでに提出しなければいけませんか?

 

先生:国民年金の場合は、亡くなった日から14日以内に、お住まいの場所の市区町村役場へ提出します。厚生年金の場合は、亡くなった日から10日以内にお住いの場所の年金事務所に提出してください。

 

生徒:受給権者死亡届と一緒に提出すべき必要書類は、なにかありますか?

 

先生:亡くなった方の年金証書、亡くなった事実のわかる書類として、住民票の除票、戸籍抄本、死亡診断書のうちいずれか1つが必要です。

「未支給年金」があった場合の注意点と請求手続き

生徒:亡くなった母親の年金は、いつの分まで支給されるのでしょう?

 

先生:年金は、亡くなった月の分まで支給されますよ。

 

生徒:そうすると、亡くなった月の1日から相続発生日までの日数を数えて、日割り計算するのでしょうか?

 

先生:いや、年金で日割り計算はおこないません。

 

生徒:年金の支給は、2ヵ月分が後払いで、その翌月に支給されるんですよね。もし、支給される月に相続が発生した場合、年金支給日の15日よりも前だと、その月の年金1ヵ月分も支給されるのではないですか?

 

先生:そうです。いいところに気がつきましたね。奇数月に相続が発生すると計算は簡単です。その月は年金支給がないので、翌月、亡くなった月とその前月の2ヵ月分だけ支給されることになるということですね。つまり、相続発生日における未支給年金は2ヵ月分。これならわかりやすいですね。

 

 

 

生徒:なるほど…。

 

先生:しかし、偶数月が少しわかりづらいので要注意です。偶数月は15日に年金支給日があるので、15日よりも前に相続が発生したのか、15日よりも後に相続が発生したのかによって、取り扱いが変わってきます。

 

生徒:確かに、15日より前に発生すると、まだ年金は支給されていませんので、2ヵ月が未支給となりますね。では、その段階で相続が発生したら、その月の1ヵ月分の年金がもらえることになり、合計して3ヵ月分の未支給になるということですか?

 

先生:よくわかりましたね! その通りです。偶数月の15日よりも前に相続が発生すると、3ヵ月分の未支給年金が発生するということです。相続発生日が属する月の年金をどうするかが問題になりますね。

 

 

 

生徒:それなら、偶数月で15日よりも後に相続が発生した場合はどうでしょうか? 15日の支払日に、すでに前月と前々月の年金は支給されていますよね。

 

先生:そうですね。15日に、前月と前々月の年金は受け取っているから、それよりも後に相続が発生すると、その月1ヵ月分だけが未支給ということになって残るんですよ。

 

 

未支給年金は「請求しないともらえない」

生徒:なるほど…。難しいですね。このような未支給年金は、次回の支払日まで待っていれば、自動的に支給されるのでしょうか?

 

先生:それが、そんな簡単な話ではないんですよ。相続が発生すると失権するから、亡くなった方の銀行口座には、年金は振り込まれません。

 

生徒:えっ…! では、どうなるのでしょう?

 

先生:未支給年金は、請求手続きが必要なんですよ。待っていれば自動的に受け取れるものではなく、請求しなければもらえません。

 

生徒:未支給年金はだれでも請求できるんですか?

 

先生:未支給年金を受け取ることのできる相続人は、亡くなった方と一緒に暮らしていたご遺族に限られます。たとえば、配偶者や子どもですね。

受け取った未支給年金、相続税はかからないが注意点も

生徒:受け取った未支給年金に、相続税はかかりますか?

 

先生:未支給年金は相続財産ではないので、相続税はかかりません。しかし、確定申告が必要な場合があるので、注意してください。年金受給者の場合、公的年金が年間400万円以下で、その他の所得も20万円の場合であれば、確定申告は必要ないということはご存じですね? すると、未支給年金を受け取ることで、年金が合計400万円を超えてしまった場合は、確定申告が必要となるわけですね。

未支給年金の請求時に必要な書類とは?

生徒:未支給年金を請求するときに必要な書類はなんですか?

 

先生:「未支給年金・未支払給付金請求書」の提出が必要です。これはWEBサイトからダウンロードできますよ。

 

生徒:未支給年金・未支払給付金請求書には、どんなことを記入するのでしょう?

 

先生:マイナンバー、基礎年金番号、年金コードなどです。受取人の銀行口座も書くことになります。

 

生徒:自分が指定した銀行口座に振り込まれるんですね。

 

先生:そうですね。ただ、ひとつ注意点があります。亡くなった方が年金を受け取っていた銀行口座を解約していないと、遺族が指定した銀行口座ではなく、亡くなった方の銀行口座に振り込まれてしまうことがあるので気をつけてください。

 

生徒:わかりました。

 

★年金支給者が亡くなった時の必要手続きについてはこちらをチェック

年金支給者が亡くなった時の必要手続き〜未支給年金請求書と年金受給者死亡届の手続方法

未支給年金は、相続放棄した人でも受け取れる!

生徒:相続を放棄している人でも、未支給年金を受け取ることはできますか?

 

先生:未支給年金は相続財産ではありませんから、未支給年金を請求できる方が相続放棄をしていても、受け取ることができますよ。

 

生徒:ありがとうございます!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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