不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)とは
生徒:先日母が他界しまして、私は札幌にある母の実家を相続することになったんです。でも、私は都内に自宅を持っていますから、今後、札幌に住む予定はありません。一軒家を売却する場合は、どうしたらいいのでしょうか?
先生:ご実家の土地と建物の「登記事項証明書」は持っていますか?
生徒:きっと家族の誰かが持っているはずですが…。登記事項証明書ってなんでしょう?
先生:登記事項証明書は、登記簿謄本のことです。厳密には、法務局で備える登記簿を謄写した証明書のことを登記簿謄本というべきなのですが、現在は法務局の登記簿もデータ化されているので、もはや謄写することはなく、登記簿のデータ内容を証明する登記事項証明書が発行されているということですね。
生徒:登記事項証明書はどこで手に入れられますか?
先生:法務局へ行けばいいですよ。全国どこの法務局に行っても、不動産の登記事項証明書を取得することが可能です。土地であれば「地番」、建物であれば「家屋番号」を指定して取得します。
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登記簿謄本の「地番」と「住居表示(住所)」は別もの
生徒:地番とは、住所のことでしょうか?
先生:「地番」とは、土地一筆ごとに割り振られている固有の番号のことで、法務局が定めた住所のことを意味します。これに対して、「住居表示」とは、市町村が定めた住所のことを意味するんですよ。郵便物を送る宛先には住居表示が使われているから、一般的に「住所」と呼ぶものは、この住居表示のことを意味しています。地番と住居表示は、まったく違う別の番号なんです。
生徒:それは知らなかったです! 母の実家の住居表示は、住所として当然知っていますが、地番は見たことがありません…。どうやって調べるのですか?
先生:地番を調べるには、法務局にも置いてある「ブルーマップ」で、住居表示かから地番を検索できます。ブルーマップとは、住宅地図に地番情報を重ね合わせたものです。内容が青色で印刷されているため、ブルーマップと呼ばれているんですよ。
登記事項証明書を取得する方法
生徒:なるほど。地番がわかれば、登記事項証明書を取得することができるんですね。
先生:そうですね。登記事項証明書ですが、郵送やオンライン申請でも取得できますよ。
生徒:それは便利! 郵送やオンラインの場合、どのように申請すればいいのでしょう?
先生:郵送で申請する場合は、手数料相当の収入印紙と登記事項証明書請求書、切手を貼り付けた返信用封筒を法務局に送ります。オンラインの場合は、「登記・供託オンラインシステム」のWebサイトで申請すればいいですよ。とても簡単です。
生徒:便利ですね!
登記簿謄本(登記事項証明書)の表題部・権利部とは?
先生:さて、下記の図表は登記事項証明書の見本です。
生徒:登記事項証明書、見ただけでは、何が書かれているのかさっぱり理解できません。詳しく教えていただけないでしょうか。
先生:わかりました。不動産の登記簿謄本とは、その土地や建物がどのようなものか、誰が所有しているのか、記録がまとめられた台帳のことです。
生徒:確かに、所有者の名前が記載されていますね。一番上に表題部というものがあり、その下に権利部というものがありますが…?
先生:登記事項証明書は、「表題部」と「権利部」とに分かれています。権利部は、さらに「甲区」と「乙区」に分かれていて、全体で3つの部分で構成されているんですよ。
生徒:この表題部というのは何が書いてあるのでしょうか?
先生:表題部に書いてあるのは、不動産の表示に関すること、つまり、その土地や建物の所在地・地番・面積・建物の名称などですね。
生徒:その下の権利部というのは何が書いてあるのでしょうか? 甲区と乙区になっていますが、変な表現ですね。
先生:権利部には不動産の権利に関することが書かれていて、甲区には所有者の住所や氏名など、乙区には所有権以外の権利を持つ人の名称や住所が書かれているんですよ。
生徒:そうすると、今回の相続で、所有者が母から私に変更されることになるんですね。どのように変更するのでしょうか?
先生:登記事項証明書に記載されている所有者を変更する手続きは、一般的に、「名義変更手続き」と呼ばれていて、法務局で登記の申請をしなければいけないんですよ。
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不動産をすぐに売却する場合でも、相続登記は必要?
生徒:相続登記が必要だということは理解できました。ですが、今回の相続では、私が取得後、すぐに売ってしまう予定です。それでも登記が必要なのでしょうか?
先生:はい。それでも登記が必要です。相続登記を省略して売却することはできません。不動産の売却には、相手に所有者を明示することが必要です。そのため、所有者として登記されていなければなりません。また、相続が発生すると、相続財産となっていた不動産は、被相続人から相続人に所有権が移っているのです。たとえ相続人が住む予定がなく売却したとしても、被相続人から、相続人を飛ばして、買主へ所有権の移転をおこなうことができません。
生徒:そうなんですね。
先生:相続した不動産を売却する場合、あなたの名前が登記事項証明書に記載されていないといけないんですよ。
生徒:不動産は難しいですね。ありがとうございました。
工藤 敦子
IPAX総合法律事務所 カウンセル弁護士
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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