主要国で唯一「経済成長していない」日本が、バブルで急速に失速した「意外な理由」【脳科学者・茂木健一郎が解説】

主要国で唯一「経済成長していない」日本が、バブルで急速に失速した「意外な理由」【脳科学者・茂木健一郎が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「アニマルスピリッツ」とは、「血気」「野心的意欲」「動物的な衝動」などと訳され、合理的には説明しがたい不確定な心理のことを指します(英経済学者ケインズが使用)。日本のバブル以降の低迷要因は、このアニマルスピリッツが関係していると、脳科学者・茂木健一郎氏はいいます。どのようなことなのでしょうか? みていきます。※本連載は、茂木健一郎氏の著書『「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」』(日本実業出版)から一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。

日本が急激に失速したワケ

さて、ここで少し話の方向を変えます。あなたはいまの日本をどのように感じていますか? 客観的な現象として、いまの日本は「沈みかけた船だ」というのはみんなが認めているのではないでしょうか。もちろん、「日本はいい国だ」という人もいますが、現状はバブル崩壊以降の約30 年間、経済政策の失敗を重ね、OECD加盟国の中で唯一経済成長していない国が日本です。

 

出所:IMF、WEO Database、April 2022を基に著者作成
[図表]主要国の実質GDP(1995年=100)の推移 出所:IMF、WEO Database、April 2022を基に著者作成

 

国際社会における立ち位置を考えてみても、戦後復興を遂げ、一時期は多少皮肉まじり、揶揄混じりにしても「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称された時代もあったわけです。中曽根康弘がロナルド・レーガンの隣に立ち……なんてことを、いまも懐かしそうに語る知識人とかいますよね。とにかくそんなふうに、一時期はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本ですが、あっという間に失速しました。

 

その原因を究明しようとしたときに、僕には眠れるアニマルスピリッツ、もしくは暴走するアニマルスピリッツと、それをコントロールするインテリジェンスを持たない日本人という構図に見えてならないのです。

 

よくも悪くも「リーダーありき」の日本人

外国人に日本のイメージを聞けば、「誠実」「真面目」「勤勉」などと言われます。しかし、これらの評価は「親方日の丸、護送船団方式では力を発揮するが、強いリーダーシップをとれる人が少ない」「八方美人で決断力がない」など、いわゆる日本人のデメリットと表裏一体であることも、いろいろな人が繰り返し指摘しています。

 

冷静に考えたら、外国人からするとちょっと怖いと思うんですね。独裁者がリーダーになったら「一億総玉砕」などと言って本当に玉砕する。経営センスに優れたリーダーの時代になったら「24時間働けますか」とか言って比喩ではなく死ぬまで働く。そして愚昧なリーダーになったら「日本は沈没船だ」とか言って、逃げるでもなく戦うでもなく、泥舟と一緒に沈もうとする。

 

それが日本人という民族ですけれども、それは生殺与奪(せいさつよだつ)の権利を誰かに委ねている人たちとも言えます。そんなの、本当の国民主権の国に生きる人たちからすると理解不能ではないでしょうか。

 

 

茂木 健一郎

理学博士/脳科学者

 

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※本連載は、茂木健一郎氏の書籍『「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」

「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」

茂木 健一郎

日本実業出版社

いまの時代、ただ勉強ができるだけではダメで、どんな場所でも生き抜ける「本当の頭のよさ」が必要。それは誰もが思うことではないでしょうか? 脳科学者である著者は「情緒に流されない力」「地図を読み換える力」「アニマ…

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