地域医療から生まれたペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)
私たちがどうしてこのように手術を避けるさまざまな方法を考案してきたのかといえば、それはそれほどこの地域(宮崎県)には感染性角膜炎に苦しむ患者が多いからにほかなりません。
感染症で角膜に穴が開いてしまう患者など、普通の開業医であれば年に1、2人遭遇するかどうかでしょう。それならば、「難しい症例が来たら、大学病院へ紹介しよう」という発想でよいかもしれません。
しかし私の病院ではそのような考えにとどまっていては、何十人、何百人という患者を救うチャンスを逃してしまうかもしれないのです。私の病院は眼科の単科病院でありながら地域の救急医療も担っているため、私の病院で患者を断ったら患者は行き場をなくしてしまうかもしれません。
さらに、患者の立場に立ってみれば、できれば手術をしないで治したいと思うに決まっています。
そこで感染症の治療についてPatient-basedで考え抜き、エビデンスを構築した結果が、クロスリンキングであり、シアノアクリレートの使用であり、人工角膜の移植なのです。
病気中心から、患者中心の医療へ
さらに言えば、このほかにもここでは紹介しきれないさまざまな治療法も私たちは考案してきました。
すべては一人でも多くの患者の光を救うために――。Patient-based Medicine:PBMを貫いて、患者を中心に考えてこそ、真の医療者だと私は考えています。
宮田 和典
宮田眼科病院 理事長
医療法人明和会 理事長