大学発のスタートアップが開発…「物流業界」に革新を起こす“究極ロボット”とは?

大学発のスタートアップが開発…「物流業界」に革新を起こす“究極ロボット”とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

トピックとしては広く浸透したDX。実際の取り組みに対し、評価するタイミングに差し掛かっています。DXによって収益化できている企業とそうでない企業はなにが違うのか、そもそも変革できたのか、どこで差がついたのか……今回は大学発のスタートアップ企業が開発した、物流業界に革新を起こす「ロボット」の事例を中心にみていきます。

 

「喘息」患者自ら情報提供に協力したくなる仕組み

医薬品開発を加速する薬剤吸入器

■事業:Propeller Health(プロペラ ヘルス)

■運営:Propeller Health

 

製薬会社での医薬品開発/医療機関による治療/患者の回復の三方に役立つIoTデータプラットフォーム

 

[図表2]Propeller Healthのビジネスモデル

 

〈ビジネスモデルの概要〉

Propeller Healthは、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を抱えた患者を対象に、IoTやビッグデータなどを活用したデジタルヘルスを推進することによって、より効果的な医薬品の開発やQOL(Quality Of Life)の向上などを実現しようとする米国のスタートアップです。

 

2010年に設立後、Novartis(ノバルティス)やGlaxoSmithKline(グラクソ・スミスクライン)といった世界有数の製薬会社と提携するなど、着実な成長を遂げています。

 

Propeller Healthの主力製品は、IoTデバイスを搭載した薬剤の吸入器です。この吸入器を使用した患者は、アプリやウェブサイトで今までの吸入歴を確認できます。吸入した時間だけではなく、場所も地図上に表示されるため、どういうときに発作が起きやすいのかを自分で振り返れます。定期的な吸入が必要な薬剤であれば、リマインドの通知も得られます。

 

吸入器を通じて得られたデータは、提携先の製薬会社やその薬剤を処方した医療機関に共有されます。患者の吸入歴を正確に把握することで、医薬品の開発や治療法の検討に役立てようという算段です。発作時に吸入する薬剤であれば、吸入された時間や場所を特定することで、発作が起きやすい環境条件を検証できます。吸入歴や症状を見たうえで、処方する薬剤を見直すことも可能になります。

 

このビジネスモデルの優れたところは、情報提供の主体である患者にも多分にメリットがあることです。個人の行動を追跡するとなると、プライバシーの保護を理由に強い反発を受けることも少なくありませんが、進んで情報を提供したくなる仕組みを構築することで社会的受容を得ることに成功したといえるでしょう。

 

進化の方向性

Propeller Healthは呼吸器疾患を対象にしていますが、ほかの疾患に関しても同種のデータビジネスを展開できるはずです。目薬や点鼻薬のように、特定の症状が出たときに使われる薬剤への適用が最適でしょう。

 

将来的には、薬剤の使用履歴や医療機関での診断結果などのデータを解析することで、当該の患者に最適な医薬品や用法/用量をデジタルに割り出せるようになるかもしれません。そのプラットフォーマーとしての役割を担うことができれば、薬剤の使用履歴の追跡ではなく、医薬品の効能を高められることを価値とする会社へと飛躍を果たせるはずです。

 

 

小野塚征志

ローランド・ベルガー 

 

 

本記事は、小野塚征志氏が監修した『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略

DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略

小野塚 征志

インプレス

最先端のDX事例を完全図解! &ビジネスに落とし込むためのヒントが満載! 「DX」はトピックとしては広く浸透しました。そのため、どんな事例があるか、どう取り組むか、どう経営に取り入れるかといった情報は語りつくされたと…

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