弱点を克服した物流センターで使われる「ロボット」
マスターメーカーの機能を有したマスターレスロボット
■事業:Kyoto Robotics(キョウト ロボティクス)
■運営:Kyoto Robotics株式会社
〈ビジネスモデルの概要〉
Kyoto Roboticsは、2000年に設立された立命館大学発のスタートアップです。物体を三次元で認識する3Dビジョンと、そのデータを活用してロボットを制御するモーションラーニングの技術をビジネスの基盤としています。
ロボットは、大きさや重さがわからない荷物の積み下ろしができません。そのため、ロボットを使うには、事前に荷物のマスターデータを作成しておく必要がありました。Kyoto Roboticsは、3Dビジョンで荷物の大きさや形状を認識し、一定の範囲内の重さであれば持ち上げられるロボットを組み合わせることで、このペインポイントを解決することに成功したのです。
Kyoto Roboticsのロボットが荷物を積み下ろすと、必然的に大きさや重量などが計測されます。これをマスターデータとして活用すれば、その後の保管、搬送、梱包、出荷などの作業にロボットを導入することも容易になります。Kyoto Roboticsは、マスターレスを成し遂げただけではなく、マスターメーカーの機能をも兼ね備えたロボットを開発したといえるでしょう。
実際のところ、荷物を積み下ろすだけのロボットとしてはかなり高額です。導入先の条件次第では、十分な投資対効果を得られないかもしれません。ただし、それはこのロボットを「荷物を積み下ろす機械」と見たときの計算です。マスターメーカーとしての価値を定量化できれば、より多くの事業機会を見いだせるはずです。
進化の方向性
Kyoto Roboticsがマスターメーカーの役割を担っている物流センターでは、他社のロボットがそのデータを使って動いています。当該のロボットメーカーにとっては、Kyoto Roboticsのおかげで導入機会が増えたわけです。マスターデータを必要とする物流ロボットが少なからず存在することを踏まえると、コンソーシアムを組んで物流センター全体の自動化を推し進めていくことも一考です。
Kyoto Roboticsが作ったマスターデータは、川下の物流センターや店舗の自動化にも寄与するはずです。出荷する荷物の大きさや重さをあらかじめ計算することで、トラックの運用台数を最少化することも考えられます。特定の物流センターでの作業だけではなく、サプライチェーンの川上から川下までの効率化を推進できるだけのポテンシャルを持っているといってもよいでしょう。