「Amazon」を超える米国スタートアップ…買い物の概念を変える「レジレス・ビジネス」驚愕の事業戦略とは【DX事例】

「Amazon」を超える米国スタートアップ…買い物の概念を変える「レジレス・ビジネス」驚愕の事業戦略とは【DX事例】

トピックとしては広く浸透したDX。実際の取り組みに対し、評価するタイミングに差し掛かっています。DXによって収益化できている企業とそうでない企業はなにが違うのか、そもそも変革できたのか、どこで差がついたのか……今回は「『Amazon』を超える米国スタートアップによる、買い物の概念を変える『レジレス・ビジネス』における驚愕の事業戦略」を中心にみていきます。

 

先行企業のプラスアルファとなる価値を提供した事例

レジレスによる新たなショッピングスタイルの創造

■事業:Standard Cognition(スタンダード コグ二ション)

■運営:Standard Cognition

 

ならではの価値を創造することで、先行者の存在を顧客や資金の獲得に活
用したレジレスプラットフォーム

 

[図表1]Standard Cognitionによるレジレスプラットフォーム

 

〈ビジネスモデルの概要〉

Standard Cognitionは、2017年に創業した米国のスタートアップです。2016年12月、Amazonはレジレス店舗であるAmazon GOのトライアルを開始しました。Standard Cognitionの創業者たちは、まさにそのタイミングでレジレスの事業化を検討しており、Amazonの発表にめげることなく起業したのです。

 

レジレスの最大のメリットは、レジの無人化により人件費を抑制できることです。加えて、レジに並ぶ必要がなくなるため、「レジが混んでいるので買うのをやめる」という人がいなくなる分、売上が増えます。カメラで来店客の行動を追跡することでレジレスを実現するというテクノロジーの特性上、来店客の服装、手に取った商品、比較した商品など、今まで把握し得なかったデータを蓄積し、マーケティングに活かせるようになることも利点です。

 

Standard Cognitionは、Amazon GOに先んじられたことを踏まえ、ならではの価値を創造しました。市販のカメラを天井に設置するだけで済むこと、既存の設備をそのまま使えること、顔認証を必要としないことなどの競争優位性を築きました。そして、Amazon GOの出現に脅威を感じた既存の小売業に売り込むことで、一気に事業を拡大したのです。

 

Amazon GOの発表によりレジレスへの注目が高まった中での創業であったことが、ベンチャーキャピタルからの資金調達を容易にすることにもなりました。競合の出現に戦慄するのではなく、それさえも自社のビジネスに活かせれば、先行者優位性を覆せるのです。

 

進化の方向性

レジレスは、買い物の概念を変えることになるでしょう。なぜなら、欲しい商品を自分のかばんに入れればよいだけになるからです。レジのみならず、買い物カゴも、万引きも、財布を取り出すこともなくなります。新しいショッピングスタイルを創造するプラットフォームといっても大げさではありません。

 

実のところ、人件費の削減効果を訴求ポイントとすると、セルフレジと競合してしまいます。レジレスならではの価値は、むしろ新たなショッピングスタイルの創造にあるのです。人手不足に苦しむコンビニやドラッグストアに売り込みをかけることは戦略的に妥当ですが、先進的であること、顧客ニーズを把握することを重視するコンセプトショップも有力なターゲットであるはずです。

 

次ページ日本の特質に合わせた物流センターでのDX事例

本記事は、小野塚征志氏が監修した『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略

DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略

小野塚 征志

インプレス

最先端のDX事例を完全図解! &ビジネスに落とし込むためのヒントが満載! 「DX」はトピックとしては広く浸透しました。そのため、どんな事例があるか、どう取り組むか、どう経営に取り入れるかといった情報は語りつくされたと…

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