(画像はイメージです/PIXTA)

高額療養費とは、同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が払い戻される制度です。申請により、医療費の自己負担額を大きく減らすことができます。しかし、相続時はほかの手続きに追われ、後回しにされやすいため要注意です。相続時の高額療養費の申請について見ていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

親が逝去…「高額療養費」はどうやって請求する?

生徒:先生、親の相続時、高額療養費を請求するにはどうしたらいいですか?

 

先生:自宅に「高額療養費支給申請書」という書類が届くので、それに記入して提出します。高額医療費支給申請書に書く内容は住所や氏名など。難しくありませんよ。

 

生徒:それを聞いてほっとしました…。請求するときに必要なものはありますか?

 

先生:本人確認のための身分証明書、口座や戸籍謄本も必要になります。準備するものが多いので忘れないようにしてくださいね。

 

生徒:戸籍謄本は、相続人である自分の分だけあればよいのですか?

 

先生:戸籍謄本は、相続人全員のものが必要になります。市役所やコンビニで簡単に手に入れることができますよ。

 

生徒:コンビニでも取れるんですね! 書類を準備したら、どこに請求すればいいのでしょう?

 

先生:国民保険や後期医療であれば、役場の健康保険課です。健康保険は、健康保険組合や協会けんぽなどで手続きをします。

 

生徒:書類は簡単でも、やっぱり手続きは面倒なんですね…。

 

先生:そうですね。高額療養費の手続きはつい後回しにしてしまいがちです。手間もかかるので面倒と思う人が多いんです。しかし、請求は2年以内と期間が決まっています。忘れてしまわないうちに、早く手続きした方がいいですね。

 

生徒:やることが多くて忘れそう…。早くやっておかなくちゃ!

 

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「高額療養費」の請求限度額がある?

生徒:高額療養費の請求方法について、よくわかりました。ところで、高額療養費には上限がありますか?

 

先生:年収などで上限が変わってきます。「現役並み・一般・住民税非課税等」というように分かれていますので、自分がどこに当てはまるのか知っておくといいですね。

 

生徒:自分がどれなのかわかりませんが、もし非課税の対象ならどうなりますか?

 

先生:住民税非課税世帯の場合は、ひと月に負担する額の上限が24,600円となっています。医療費がこれ以上になってしまった場合は、払い戻しを受けることができます。

 

生徒:いくら医療費がかかっても、支払うのは24,600円だけなんですか?

 

先生:そうです。医療費が20万円かかったとしても24,600円以上を支払う必要はありません。自己負担の上限が24,600円と決まっていますので、残りの17万5,400円分は自分の手元に戻ってきます。

 

生徒:ひと月に何度も入院したり、手術をしたりしても同じですか?

 

先生:自己負担の上限が下がる場合もありますよ。

 

生徒:そうなんですか⁉

 

先生:一緒に住んでいる人のなかで、同じ月に何人か同時にけがや病気をしたり、1人でいくつかの病院に行ったりしたときにかかった医療費を合わせることがでます。

 

生徒:一緒に住んでいる家族全員分の医療費を合算できるんですね。大人でも子どもでも同じように合算できますか?

 

先生:年齢によって合算の仕方が変わってくるので注意が必要です。

 

生徒:ほかにもなにかありますか?

 

先生:12ヵ月間の間に3回以上の高額療養費が出された場合、4回目以降は3回目までと比べて、かかる医療費が下がることになっています。

 

生徒:あまりないことだと思いますが、助かりますね。

 

先生:ただし、健康保険が変わったときは、合わせられなくなるので注意してください。自己負担の医療費が高くなりすぎないようになっているんですよ。

 

生徒:知りませんでした。これはありがたいですね。

 

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高額療養費として給付されたお金は「相続税の対象」

生徒:もしかして高額療養費も、相続の際に申告しなければいけませんか?

 

先生:高額療養費として給付されたお金についても相続税の対象となりますので、申告をする必要があります。

 

生徒:この申告も早めの方がいいですか?

 

先生:高額療養費の相続は、できるだけ早くおこなってください。というのも、高額療養費の請求は2年以内ですが、相続税の申請期間は10ヵ月とかなり短くなっているからです。相続税の申告期限が切れてしまった場合は、延滞金がかかるので余計な出費が増えてしまいます。

 

生徒:せっかく戻ってきたお金が、税金の他にも取られるのは嫌ですね。

 

先生:相続のときには、さまざまな手続きが必要になるので、高額医療費のことを忘れてしまうことがあります。不安であれば弁護士・税理士・司法書士などの専門家に相談しながら、ミスのないように進めていきましょう。

 

生徒:はい、わかりました!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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