メガネ店で…? ? ?
どこでも一人で出かけるオットが、「ついてきて」と頼んでくることもあった。たとえば買い物。
パッと手にとって買える店ならいいけれど、店員さんと細かいやりとりがあると、一人では難しい。メガネ店で「パソコン用のブルーライトカットメガネを老眼鏡にしたい」というややこしい希望を店員さんに伝えるのも、オットにはひと苦労だ。
さらに難関は、検眼。
数字の「6」と「9」が横に並んでいる画面を見せられ、「6と9、どちらがハッキリ見えますか?」などと訊かれたら、お手上げだ。オットは読むのが苦手で、特に数字は間違えやすいのだ。
「えっと……」と戸惑うオットの横から、口を出す。「この人、数字がうまく読めないので、右か左かで答えてもいいでしょうか?」。? ? ? 店員さんの頭の上にハテナマークが浮かぶのが見えた。
次に出てきた画面には格子状の模様が。これなら大丈夫かもと思ったが、「縦線と横線、どちらが濃く見えますか?」と訊かれたオットは「……意味がよくわかりません」。質問が複雑すぎたのだ。隣で私がゆっくりかみ砕いて説明する。店員さんのハテナマークが増えていく。
次の画面はひらがな表。「上から順に読んでください」(わかりません)。レンズをつけて新聞を渡され、「この位置で読めますか?」(読めません)。そのつど、私が「言葉に障害があるので」と説明し、文字を記号などに変えてもらう。
ハテナマークいっぱいの店員さんは、それでもにこやかに対応してくださって、無事にブルーライトカットの老眼鏡を買うことができました。
世の中にはこういう人もいるんですよ。失語症です。以後、お見知りおきを。