(※画像はイメージです/PIXTA)

ある日突然脳出血の後遺症で47歳の夫が失語症になったら、あなたはどうしますか──? 夫が失語症になったことをきっかけに、言語リハビリの専門家である言語聴覚士の資格を取得した米谷瑞恵氏が、発症から最初の2年半を夫婦がどう過ごしてきたのかをお話しします。本連載では、米谷瑞恵氏の著書『こう見えて失語症です』(主婦の友社刊)を一部抜粋してお届けします。

メガネ店で…? ? ?

どこでも一人で出かけるオットが、「ついてきて」と頼んでくることもあった。たとえば買い物。

 

パッと手にとって買える店ならいいけれど、店員さんと細かいやりとりがあると、一人では難しい。メガネ店で「パソコン用のブルーライトカットメガネを老眼鏡にしたい」というややこしい希望を店員さんに伝えるのも、オットにはひと苦労だ。

 

さらに難関は、検眼。

 

数字の「6」と「9」が横に並んでいる画面を見せられ、「6と9、どちらがハッキリ見えますか?」などと訊かれたら、お手上げだ。オットは読むのが苦手で、特に数字は間違えやすいのだ。

 

「えっと……」と戸惑うオットの横から、口を出す。「この人、数字がうまく読めないので、右か左かで答えてもいいでしょうか?」。? ? ? 店員さんの頭の上にハテナマークが浮かぶのが見えた。

 

次に出てきた画面には格子状の模様が。これなら大丈夫かもと思ったが、「縦線と横線、どちらが濃く見えますか?」と訊かれたオットは「……意味がよくわかりません」。質問が複雑すぎたのだ。隣で私がゆっくりかみ砕いて説明する。店員さんのハテナマークが増えていく。

 

次の画面はひらがな表。「上から順に読んでください」(わかりません)。レンズをつけて新聞を渡され、「この位置で読めますか?」(読めません)。そのつど、私が「言葉に障害があるので」と説明し、文字を記号などに変えてもらう。

 

ハテナマークいっぱいの店員さんは、それでもにこやかに対応してくださって、無事にブルーライトカットの老眼鏡を買うことができました。

 

世の中にはこういう人もいるんですよ。失語症です。以後、お見知りおきを。

こう見えて失語症です

こう見えて失語症です

米谷 瑞恵

主婦の友社

ある日突然脳出血の後遺症で47歳の夫が失語症になったら、あなたはどうしますか?  そもそも失語症って何? 家族はどうすればいいの? 退院後の生活はどう変わる? コミュニケ―ションはどうすればいい? 仕事に戻れるの?…

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