(※画像はイメージです/PIXTA)

ある日突然脳出血の後遺症で47歳の夫が失語症になったら、あなたはどうしますか──? 夫が失語症になったことをきっかけに、言語リハビリの専門家である言語聴覚士の資格を取得した米谷瑞恵氏が、発症から最初の2年半を夫婦がどう過ごしてきたのかをお話しします。本連載では、米谷氏の著書『こう見えて失語症です』(主婦の友社刊)を一部抜粋してお届けします。

 

 

 

 

 

 

オットが倒れた、脳出血って何だっけ?

オットが救急搬送された病院の医師は、CT画像を見ながら「脳出血ですね」と言った。続けて「命の危険はない」「言葉の障害が残る」「数字が苦手になる」「出血が止まらない場合は開頭手術になる」と早口で告げ、「数日間はすぐに連絡がつくように」と私の携帯番号を控えた。

 

えっ、えっ、脳出血って何? 脳卒中とどう違うの? いやそれより、命に別状がなくてよかった。いやいやそれより、手術になるかもって。どうする取材、どうする出張。

 

その頃、フリーの編集者兼ライターをしていた私は、仕事に穴をあけないことが最優先事項で、その日はとにかくあやまったりお願いしたり締め切りを延ばしてもらったり。脳出血と脳卒中の違いを調べる余裕もないまま、翌日は入院手続きやら手術の同意書やらオットの会社と親戚への連絡やら。脳出血は脳の血管が切れること、脳梗塞は脳の血管が詰まること、脳卒中はそれらの総称ということは、仕事に向かう電車の中でスマホで調べた。

 

一方、オットは一日中うつらうつらしていた。たまに目を開けると「ゐあkljfだれぽkめあいg」。それまで聞いたことのない「言葉」を発した。

 

なんじゃこりゃ。どうなってんの。まあ、脳に出血してるんだから、こういうこともあるんでしょう。それよりも、体が動かないのは困ったな。この頃はまだ麻痺も強く残っていて、ベッドで起き上がることも難しかった。入院2日目から理学療法士のリハビリが始まり、幸い出血も止まって手術の可能性もなくなった。体の訓練は順調に進み、支えがあれば歩けるようにもなってきた。でも「言葉」は相変わらず「しぇいgかおえう」。そういえば「言葉の障害が残る」と言ってたな。

 

でもまあ、3ヵ月もすれば元に戻るよね。最初の急性期病院には言語聴覚士がいなかった。言語検査もリハビリもなく、失語症について説明されることもなかったのだ。

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こう見えて失語症です

こう見えて失語症です

米谷 瑞恵

主婦の友社

ある日突然脳出血の後遺症で47歳の夫が失語症になったら、あなたはどうしますか?  そもそも失語症って何? 家族はどうすればいいの? 退院後の生活はどう変わる? コミュニケ―ションはどうすればいい? 仕事に戻れるの?…

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