(※画像はイメージです/PIXTA)

ある日突然脳出血の後遺症で47歳の夫が失語症になったら、あなたはどうしますか──? 夫が失語症になったことをきっかけに、言語リハビリの専門家である言語聴覚士の資格を取得した米谷瑞恵氏が、発症から最初の2年半を夫婦がどう過ごしてきたのかをお話しします。本連載では、米谷瑞恵氏の著書『こう見えて失語症です』(主婦の友社刊)を一部抜粋してお届けします。

文字は読めないから、イラストで

入院中の入浴で、オットはよくボディソープとシャンプーを間違えた。容器が似てるから、というのもあるけれど、文字が読めないから、どっちがどっちなのか見分けがつかないという。そういうことか、うーん、読めないって不便だ。

 

ある日、病院に行くと、スタッフのかたが容器にイラストつきのシールを貼ってくださっていた。シャンプーには頭の絵、ボディソープにはお相撲さんの全身の絵。わあ、これなら読めなくてもわかります。やったー、ありがとうございます。お相撲さんの絵だから、よけいに嬉しいです。オットも私も相撲が好きで、病気になる前は国技館で開催される場所には必ず足を運んでいたので。

 

その少し前に、同じ病室に相撲好きなかたが入院してきた。夕方になるとテレビで相撲中継を見ながら、ほかの入院患者さんと相撲の話をしている。オットもその輪に加わりたいけど、言葉が出ないから聴いているだけ。でも、聴いているだけでも楽しいらしい。

 

スタッフのかたは、そんなオットの様子を見ていたのかもしれない。ボディソープのお相撲さんのイラストを見て、オットは「親切だねえ」とニコニコしている。よかったね。これでもうシャンプーと間違えないね。

こう見えて失語症です

こう見えて失語症です

米谷 瑞恵

主婦の友社

ある日突然脳出血の後遺症で47歳の夫が失語症になったら、あなたはどうしますか?  そもそも失語症って何? 家族はどうすればいいの? 退院後の生活はどう変わる? コミュニケ―ションはどうすればいい? 仕事に戻れるの?…

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