男性の育休取得の現状…2021年は過去最高の13.97%、過半数は2週間未満だが長期化傾向も

男性の育休取得の現状…2021年は過去最高の13.97%、過半数は2週間未満だが長期化傾向も
(写真はイメージです/PIXTA)

2022年10月に「産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)」が施行され、男性の育休取得が一層期待される中、民間企業勤務の男性の育休取得率は9年連続上昇し、2021年は13.97%にのぼります。しかし男性の育休取得期間は2018年と比べればやや長期化しているものの、2週間未満が過半数を占めます。男性の育休について、ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が解説します。

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    (2) 女性の育休取得率

    同様に2021年の女性の育休取得率を見ると、首位は「鉱業,採石業,砂利採取業」(100.00%)だが、他産業と比べて就業者数が格段に少ない。また、2018年からの上昇率も大きいが(全産業で+2.90%ptのところ、当該産業では+47.00%pt)、これは育休取得環境が改善された影響もあるだろうが、就業者数が少ないために数値が変動しやすい影響を考慮する必要があるだろう。

     

    次いで、2021年の女性の育休取得率は、2位「情報通信業」(97.60%)、3位「電気・ガス・熱供給・水道業」(92.60%)、4位「不動産業,物品賃貸業」(91.50%)、5位「複合サービス事業」(90.90%)までが9割を超えて続く。なお、女性の育休取得率は「生活関連サービス業,娯楽業」(77.90%)と「宿泊業,飲食サービス業」(63.70%)を除く16業種中14業種で8割を超える。また、最下位の「宿泊業,飲食サービス業」でも男性の首位(「金融業、保険業」:40.64%)を大幅に上回っており、男女の育休取得状況には大きな隔たりがある様子が見てとれる。

     

    また、2018年から2020年にかけての変化を見ると、16業種中9業種で上昇しており、最も上昇幅が大きいのは、前述の通り「鉱業,採石業,砂利採取業」(+47.00%)、次いで「建設業」(+30.80%)、「運輸業,郵便業」(+23.80%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(+12.10%)、「生活関連サービス業,娯楽業」(+11.10%)と1割以上で続く。

     

    なお、上昇幅の大きな上位3つの産業では従来から就業者に占める男性の割合が高い*7。よって、旧来型の日本の雇用慣習などが根強く残るような印象を受ける産業においても、育休を取得して就業を継続する女性が増えており、近年の「女性の活躍推進」政策や「働き方改革」の効果等によって、仕事と家庭の両立環境の整備が進んでいる様子がうかがえる。

     

    *7:図表4より各産業の男性の割合は「建設業」82.9%、「運輸業,郵便業」78.4%、「鉱業,採石業,砂利採取業」66.7%。

     

    (3) 育休取得率の男女の傾向の違い

    男女の育休取得率の産業別順位を比べると、「鉱業,採石業,砂利採取業」(男性2位、女性1位)や「情報通信業」(男性4位、女性2位)、「複合サービス事業」(どちらも5位)など、男女とも上位を占め、仕事と家庭の両立環境の整備を図る企業が増えている様子がうかがえる産業もあれば、「電気・ガス・熱供給・水道業」(男性14位、女性3位)や「不動産業,物品賃貸業」(男性15位、女性4位)、「金融業,保険業」(男性1位、女性11位)など男女の傾向が必ずしも一致しない産業もある。

     

    男女の傾向が一致しない産業については、「金融業,保険業」では男女の育休取得率の差が最も小さいため(男性が女性より▲46.26%pt)、前述の通り、戦略的な男性の育休取得の促進によって男性の育休取得率が他産業より圧倒的に高い影響と見られる。

     

    一方で、「電気・ガス・熱供給・水道業」(同▲84.33%ptで16産業中で最も差が大きい)や「不動産業,物品賃貸業」(同▲83.31%ptで2番目に差が大きい)では男女の育休取得率の差が8割を超えて大きくひらいており、男性の育休取得が進まない何らかの要因があると見られる。この要因としては、たとえば、業務における男女の役割分担が固定化しているような組織では、両立環境の整備が進む中で女性は育休を取得しやすくなっていても、男性は依然として育休取得の希望を言い出しにくい雰囲気が根強く残っているなど、組織風土などの課題があげられる。

     

    また、2021年の女性の育休取得率最下位の「宿泊業,飲食サービス業」については、2021年の男性の育休取得率は2018年と比べて10%を超えて大幅に低下したために男女差は比較的小さくなっている(同▲55.40%ptで2番目に差が小さい)。しかし、2018年の数値を見ると、男性は首位の一方、女性は13位と低く、男女の傾向が一致していない産業と言える。この要因としては、男女の雇用形態の違いがあげられる。男性は比較的育休を取得しやすい正規雇用者が多い一方、女性は雇用期間によっては制度の対象外となるような非正規雇用者が多い*8とことがあげられる。

     

    *8:ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査 第5回」によると、20~74歳の雇用者で「宿泊、飲食サービス業」従事者のうち男性は正規雇用者45.0%、非正規雇用者55.0%(男性はサンプル数が少ないため参考値)、女性は20.4%、79.6%である。

     

    3.事業所規模別の状況~大規模ほど育休取得率が高く、500人以上で男性17.0%、中小は人手不足感

    事業所規模別に男性の育休取得率を見ると、規模が大きいほど取得率は高く、男性の育休取得の進む大企業傘下の事業所が取得率を押し上げている様子がうかがえる(図表6)

     

    【図表6】
    【図表6】

     

    女性では100人以上の事業所では9割を超える一方、100人未満では7割台であり、男性と比べて育休取得が進んでいるだけに事業所規模による差が大きな様子がうかがえる。

     

    2018年と2021年を比べると、男性では30人以上の事業所(+約1割)と比べて、育休取得率の低い30人未満(+5.45%pt)で伸びがやや小さく、小規模の事業所では休業中の代替要員の確保に課題のある様子がうかがえる。

     

    一方、女性では、大規模な事業所では既に育休取得が進んでいるために、比較的育休取得率が低い小規模の事業所での伸びが若干大きくなっている。

     

    なお、日本商工会議所および東京商工会議所「多様な人材の活躍に関する調査」(2021年9月)によると、中小企業における男性の育休取得促進に関する課題で最も多いのは「人員に余裕がなく、既存社員による代替が困難」(56.7%)で過半数を占め、次いで「専門業務や属人的な業務が多く、対応できる代替要員がいない」(38.2%)、「採用難で代替要員が確保できない」(32.1%)と続き、やはり代替要員の確保に課題のある企業が多い。

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、2022年12月12日に公開したレポートを転載したものです。
    ※年金額改定のルールの詳しい仕組みや経緯は、中嶋氏のレポート「2022年度の年金額は0.4%減額、2023年度は増額だが目減りの見込み (前編)年金額改定ルールの経緯や意義」を参照。

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