(画像はイメージです/PIXTA)

予期せぬ別れに直面したとき、人は何を思い、どう乗り越えるのか。書籍『もう会えないとわかっていたなら』(扶桑社)では、遺品整理会社、行政書士、相続診断士、税理士など、現場の第一線で活躍する専門家たちから、実際に大切な家族を失った人の印象深いエピソードを集め、「円満な相続」を迎えるために何ができるのかについて紹介されています。本連載では、その中から特に印象的な話を一部抜粋してご紹介します。

 

涙と笑顔に包まれた葬儀

そうして出来上がった葬儀会場は、故人を偲ぶ場として、とても相応しいものとなっていました。

 

参列に訪れた人たちを、故人の写真が元気な笑顔で出迎えます。飾られた写真は、故人の生い立ちを辿るように配置されていました。

 

誕生から幼稚園までの写真には、故人の両親や親戚が多く写っています。小学校、中学校、高校、大学。そこには、数多くの友達の笑顔がありました。就職してから結婚するまでの間は、かつて恋人だった奥さんとの写真。そして、子どもたちが誕生してからの写真には、家族を守る頼もしい父親の姿がありました。

 

生い立ちを振り返るコーナーの他には仕事や趣味のコーナーもありました。仕事のコーナーには、使っていた手帳やお気に入りのネクタイにスーツ。趣味のコーナーには、故人が退院したら乗りたがっていた愛用のバイクが運び込まれていたのです。

 

参列者はそれを順に見ていきながら、思い思いに故人との思い出を語り、好きなタイミングで自由に故人に手を合わせ、お別れの言葉をかけていました。

 

奥さんも多くの人に声をかけられていました。懐かしい人や、初めて会う人。その人とご主人との思い出話の中には、自分の知らなかったご主人の話もたくさんあったようでした。

 

家での父親しか知らなかった子どもたちも、立派に働く父親の姿を思い浮かべることができたようです。それは、通常の葬儀ではなかなかないことです。通常の葬儀では遺族にはやらなければならないことが多く、参列者の方々と話をする時間はあまりとれないからです。

 

しかし、この葬儀では会場のあちこちで故人を偲ぶ会話が交わされ、遺族も、参列者も、葬儀会場全体が涙と笑顔に包まれていたのです。葬儀が終わり、帰っていく参列者を遺族の後ろで見送りました。

 

彼らの表情は今も忘れることができません。懐かしい旧友と再会を果たしたような、そんな晴れやかな顔をしていたのです。それを奥さんも子どもたちも笑顔で見送っていました。これが、私の記憶に残る「一番いいお葬式」です。

 

株式会社サステナブルスタイル

後藤 光

 

※本連載は、2022年8月10日発売の書籍『もう会えないとわかっていたなら』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございます。あらかじめご了承ください。

もう会えないとわかっていたなら

もう会えないとわかっていたなら

家族の笑顔を支える会

扶桑社

もしも明日、あなたの大切な人が死んでしまうとしたら──「父親が家族に秘密で残してくれた預金通帳」、「亡くなった義母と交流を図ろうとした全盲の未亡人」、「家族を失った花屋のご主人に寄り添う町の人々」等…感動したり…

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