涙と笑顔に包まれた葬儀
そうして出来上がった葬儀会場は、故人を偲ぶ場として、とても相応しいものとなっていました。
参列に訪れた人たちを、故人の写真が元気な笑顔で出迎えます。飾られた写真は、故人の生い立ちを辿るように配置されていました。
誕生から幼稚園までの写真には、故人の両親や親戚が多く写っています。小学校、中学校、高校、大学。そこには、数多くの友達の笑顔がありました。就職してから結婚するまでの間は、かつて恋人だった奥さんとの写真。そして、子どもたちが誕生してからの写真には、家族を守る頼もしい父親の姿がありました。
生い立ちを振り返るコーナーの他には仕事や趣味のコーナーもありました。仕事のコーナーには、使っていた手帳やお気に入りのネクタイにスーツ。趣味のコーナーには、故人が退院したら乗りたがっていた愛用のバイクが運び込まれていたのです。
参列者はそれを順に見ていきながら、思い思いに故人との思い出を語り、好きなタイミングで自由に故人に手を合わせ、お別れの言葉をかけていました。
奥さんも多くの人に声をかけられていました。懐かしい人や、初めて会う人。その人とご主人との思い出話の中には、自分の知らなかったご主人の話もたくさんあったようでした。
家での父親しか知らなかった子どもたちも、立派に働く父親の姿を思い浮かべることができたようです。それは、通常の葬儀ではなかなかないことです。通常の葬儀では遺族にはやらなければならないことが多く、参列者の方々と話をする時間はあまりとれないからです。
しかし、この葬儀では会場のあちこちで故人を偲ぶ会話が交わされ、遺族も、参列者も、葬儀会場全体が涙と笑顔に包まれていたのです。葬儀が終わり、帰っていく参列者を遺族の後ろで見送りました。
彼らの表情は今も忘れることができません。懐かしい旧友と再会を果たしたような、そんな晴れやかな顔をしていたのです。それを奥さんも子どもたちも笑顔で見送っていました。これが、私の記憶に残る「一番いいお葬式」です。
株式会社サステナブルスタイル
後藤 光