帝国データバンクが2022年1月に行った「原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査」の結果では顕著にその様子が表れています。まず、原材料の不足や価格の高騰の影響について尋ねたところ、「影響がある」と回答した企業は77.3%に上っています。そのうち「価格転嫁は全くできていない」と回答した企業は36.3%でした。
つまり全体の3分の1の企業が、原材料価格の値上がりに直面しながらも、価格に転嫁できていなかったのです。
また「価格転嫁はできている」と回答した企業であっても、原材料価格の値上げ分をすべて価格に転嫁できていた企業はわずか4.1%で、8割程度できていると回答した企業も8.8%にとどまりました。平均すると企業の価格転嫁率は25.9%に過ぎず、価格上昇分の73.1%は企業が負担していることが分かりました。
なぜこのような状況になっているのかというと、調査で聞こえてきた声は次のようなものでした。
現場の本音「元請けに対して値上げを言いだせない…」
「価格転嫁することは、下請けの立場からは不可能」(機械工具卸売、三重県)
「仕事量が少ないなかどこも売上確保のため安価な見積りを提出するため、価格転嫁をしたら入札物件では落札できない」(内装工事、東京都)
つまり、中小企業の多くは下請けという弱い立場にあるため、元請けに対して値上げを言いだせないのです。
一方で、卸売業など粗利率が低い企業は、原材料価格の上昇分をそのまま転嫁しなければ逆ザヤになるため比較的値上げができているようで、次のような声が上がっています。
「原材料不足が顕著となっているため、価格の上昇について合意されやすい」(鉄鋼卸売、愛知県)
「メーカー側で買い値が設定されるが、原材料確保に主眼が置かれるため比較的高値で推移している」(鉄スクラップ、徳島県)
しかし、
「価格転嫁はあくまでも仕入れ価格の値上げのみで、人件費・運送コストなど自社の経費の上乗せができる環境とはなっていない」(鉄鋼卸売、大阪府)
という声もあり、余裕があるわけではないことも見えてきます。