サラリーマンの生活がいつまでも厳しい根本原因…日本企業の「値上げできない」という“思い込み”

サラリーマンの生活がいつまでも厳しい根本原因…日本企業の「値上げできない」という“思い込み”
(※写真はイメージです/PIXTA)

止まらぬ原油、天然ガスなどの「原材料価格の高騰」…。製造コストを圧迫する現状では、「値上げに踏み切らなくては下請け製造業に未来はない」、と700社を超える中小製造業の経営改善を支援してきた大場正樹氏は言います。本連載では、「値上げできない」は多くの中小製造業の思い込みであると語る大場氏が、「インフレ時代に生き残るための値上げ」について、交渉に勝つ価格設定や、実際の交渉テクニックなど具体的な戦略をわかりやすく解説します。

 

なぜ「値上げできない」と思い込んでいるのか

そもそも、なぜ値上げが必要なのかといえば、なによりもまずは赤字や倒産などの事態を回避するためです。国税庁の統計によれば、日本全国で赤字の法人率は65.5%(2019年度)です。

 

この数字を見ると高いと思うかもしれませんが、2010年度には赤字法人率は75.8%もあって、9年連続で改善しています。それでも7割近くの企業は赤字決算をしているわけですから、たいていの企業は経営に苦労しているといっても過言ではないでしょう。

 

なぜ企業が赤字になるのか――簡単にいってしまえば、出費があるからです。つまり、その製品やサービスをつくり上げるのに必要な金額をまかなう、適正な価格で販売していないために赤字になるのです。

 

この赤字を解消するにはどうすればよいか――一つの答えが値上げです。

 

しかし、そう言うと「値上げをすると売れなくなるんじゃないですか」という答えが返ってきます。値上げをすると取引先に嫌な顔をされるのではないか、値上げをすれば他社から買うと言われて受注数が減ったり最悪の場合取引を打ち切られてしまうのではないかという恐怖心があるからです。

 

断言します。「値上げできない」は思い込みです。うまくいくかいかないかは別として、値上げをすることは決意さえすればできるのです。まずは自分の思い込みを捨てて、なぜそう思ってしまうのかを分析し、どうすれば値上げができるのかを客観的に考えてみることから始めましょう。

自分のためではなく、従業員のために値上げをする

私がこれまでにコンサルティングをしてきた限りでは、全部の製品ではないものの、個別では明らかに赤字になっている製品をいつまでも販売している企業が数多くありました。

 

創業時から売っているからとか親の代からの付き合いだからといって、赤字ではないかとうすうす気づいていても精査をせずそのまま売り続けているのですが、それはよくないことです。

 

そもそも会社の赤字がなぜよくないのかといえば、第一に従業員の士気が上がらず、会社の空気が悪くなるからです。

 

赤字の企業で働きたいと考える人は誰もいません。自分の働いている会社が赤字であると「このままこの会社で働き続けて大丈夫かな」とか「万が一に備えて転職先を探しておこう」などと余計なことを考える理由を与えてしまうので、仕事に集中できず生産性を下げてしまうことになります。

 

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※本連載は、2022年9月27日発売の書籍『インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術』から抜粋したものです。その後の制度改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

大場 正樹

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊から30年、デフレが続いた日本を未曾有のインフレが襲う。 「値上げできない」という思い込みからの脱却が 原材料価格の高騰に苦しむ下請け製造業の活路を拓く。 これまで700社を超える中小製造業の経営改善…

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