(※写真はイメージです/PIXTA)

原油や天然ガスなどの原材料価格が高騰し、製造コストを圧迫する現状では、値上げに踏み切らなくては下請け製造業に未来はない、と700社を超える中小製造業の経営改善を支援してきた大場正樹氏は言います。本連載では、「値上げできない」は多くの中小製造業の思い込みであると語る大場氏が、「インフレ時代に生き残るための値上げ」について、交渉に勝つ価格設定や、実際の交渉テクニックなど具体的な戦略をわかりやすく解説します。

中小製造業にこそ「値上げマインド」が必要

私は独立前、非鉄金属の商社に勤めていました。商社というのは基本的にはものを右から左へと流すだけなので、そこまで高い粗利は取れません。ですから、商品価格は必ず原材料価格に合わせてスライドする形式にしていました。

 

非鉄金属というのはアルミや銅、ステンレスなど、鉄以外の金属です。例えば銅などは毎日値段が変わりますから、それに合わせて毎日商品の価格が変わるのです。

 

鉄やセメントや木材は価格が安定していて、毎日変化するようなことはないのでスライド式の価格にしなくてもよかったのですが、非鉄金属はそうはいきませんでした。

 

ですから、原材料価格に合わせて商品価格をスライドするのは私にとってみれば当然なのですが、多くの中小企業では常識外のことらしく、値上げのコンサルティングをするときも最初はずいぶんと抵抗されました。

 

ところが2021年になってから、鉄や木材といったこれまでは安定していた原料も毎月のように値上げされて、ようやく「商品価格に転嫁しないと危ない」と理解してもらえるようになりました。

 

スライド価格というのは、非鉄金属をはじめとした原材料の卸や商社では常識です。

 

彼らは1~2割しか粗利を取らないので、原材料価格が上がれば問答無用で値上げします。それが当然の世界で仕事をしてきた私は、当初、製造業の皆さんが原材料費の値上げを努力で吸収しようとするのを見て驚きました。確かに加工に力を入れている製造業では、原材料費の割合は低いので頑張ればなんとかなるところもあります。

 

しかし、インフレの進行は努力で吸収できる規模を超えています。消費者物価もどんどん上がっているところで、自分の会社だけ製品価格を据え置くなどということができるはずもありません。

 

「弊社は安く仕上げます」というのは、取引先にとってはうれしい言葉かもしれませんが、結局のところ「従業員を安く使います」という意味なので、人がどんどん辞めていって、最終的には会社が潰れてしまいます。

 

同じ努力をするのであれば、取引先に対して価格交渉をして、出た利益を従業員にしっかり還元して、人が集まって成長する会社をつくる道を選ぶべきです。

 

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※本連載は、2022年9月27日発売の書籍『インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術』から抜粋したものです。その後の制度改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

大場 正樹

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊から30年、デフレが続いた日本を未曾有のインフレが襲う。 「値上げできない」という思い込みからの脱却が 原材料価格の高騰に苦しむ下請け製造業の活路を拓く。 これまで700社を超える中小製造業の経営改善…

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