近年増加…「アプリでセルフチェックイン」できるホテルの実態と効果

近年増加…「アプリでセルフチェックイン」できるホテルの実態と効果
(※画像はイメージです/PIXTA)

集客を強化し、利便性を上げるため、アプリでセルフチェックインができるシステムを導入するホテルが増えています。その実態と効果をみていきましょう。

 

【事例】ホテルアプリ導入の実態と効果

それでは、ホテルアプリは実際にどのような使われ方をしているのでしょうか? また、アプリが利用者やホテル事業者にどのようなメリットをもたらしているのでしょうか? 4つの事例をピックアップしてみてまいりたいと思います。

 

1.アパホテル

■利用者の時間を一番に考えたサービスを提供

アパホテル株式会社は、全国最大の710店舗(記事執筆時点)を展開する国内有数のホテルチェーンです。同社が2017年にいち早く運用を開始したアパ公式アプリは、全国のアパホテルを検索して、条件にあった宿泊予約や日帰り予約、オンライン決済のほか、アプリ上でチェックイン手続きを完了させる「アプリチェックイン」機能を備えたスマートフォンアプリで、これまでに300万ダウンロードを記録しています。

 

最大の特徴としては、予約、チェックイン、チェックアウトをいかにスピーディに簡潔に済ませることができるかということを重視した、まさに同社の最大の顧客層である忙しいビジネスマンのニーズにマッチしたアプリとなっていることです。

 

アプリを通じて予約し、事前に決済を済ませれば、宿泊予定日前日の15時から部屋の指定とともにアプリチェックインが可能となります。アプリチェックインと行うと、マイページにQRコードが発行され、当日はフロント横に設置されたアプリチェックイン専用機にスマホをかざすだけで瞬時にカードキーが発行されます。チェックアウトもカードキーを専用のポストに投函するだけ。まさに利用者の時間を一番に考えたサービスとなっています。

 

また、アプリ内にポイントを貯めることができ、特にアプリの利用でボーナスポイントが加算される仕組みとなっています。このような配慮も業界最大級の300万ダウンロードという成果につながっているのではないでしょうか。ホテル側から見ると、アプリを通じた予約はOTAを通さない形の直接の予約となりますので、ユーザーが増えれば経営上のメリットも大きいことと推測できます。

 

2.スーパーホテル

顔認証チェックインも導入開始

株式会社スーパーホテル(本社:大阪府大阪市)は国内169店舗・海外2店舗(記事執筆時点)を展開する、こちらも国内有数のビジネスホテルチェーンです。2018年にはロゴとブランドコンセプトが一新され、洗練されたイメージのホテルへと生まれ変わりました。オレンジを基調としたコーポレートカラーはアプリにも継承されていて、スマートなインターフェイスを実現しています。

 

アプリからは、GPSと連動したホテル検索機能を利用でき、地図から選択したホテルを予約することができますし、地図を利用せずに予約することも可能です。チェックインに際しては、アプリ会員証のQRコードをフロントのチェックイン機にかざすだけ、並ばずに素早く手続きを完了することができます。また、全施設で暗証番号キーを利用したキーレスシステムが採用されているため、鍵を持ち歩く必要がなく、チェックアウトの際はフロントに立ち寄る必要もありません。

 

アプリに登録すれば、スーパーホテル公式予約会員としてアプリからポイントの登録と確認ができ、時期によってアプリ限定のボーナスポイントキャンペーンなども実施されています。特筆すべきは、本年6月から一部施設で導入が開始されたアプリを使った顔認証チェックインです。事前にアプリから顔写真を登録しておくと、ホテル入館時に専用端末で瞬時にチェックインが完了します。フロントに並ぶ必要もなく、両手がふさがっていてもチェックイン可能、深夜12時以降に施錠されるホテルのドアも顔パスで入館できます。

 

現在は、スーパーホテルPremier東京駅八重洲中央口でのみ利用可能ですが、同社では対象ホテルを順次拡大していく予定としています。

 

出典:
[図表]スーパーホテルの顔認証チェックイン 出典:スーパーホテル公式WEBサイト

 

キーレスシステムの採用や顔認証チェックインの導入など先進性の高さがうかがえる同社。そのなかでのアプリの積極的な活用は、リブランディングにより刷新されたホテルのイメージと相まって、同社のブランド価値を高めるとともに、利用者の満足度を向上させる重要な役割を担っていると感じさせられます。

 

3.JRホテルグループ

■スマホがルームキーに変身

「JRホテルメンバーズ」は日本全国と、台湾を含め94のJR系グループホテル(記事執筆時点)で利用可能な会員プログラムです。その会員向けのスマートフォンアプリがリリースされたのは昨年1月。アプリ上での会員登録やホテル情報への簡単なアクセス、宿泊予約が可能となっています。

 

また、スマホがルームキーとなる「モバイルキー」が大きな特徴(対応施設は11施設)となっており、サービスの非接触化と利便性の向上に効果を発揮しています。

 

GPSと連動した予約機能では、地図上からホテルを選択し、料金を確認しながら予約を行なうことが可能です。チェックインは、アプリのタッチだけでスムーズに完了する「スマートチェックイン」に対応。対応施設ではアプリを起動したスマホがそのままルームキーになる「モバイルキー」機能が利用でき、施設利用者は接触を避けて快適に入室することができます。

 

そのほか、GPSを利用したホテルまでのアクセス情報に加えて、客室情報、レストラン情報、おススメの観光地情報にもアクセスでき、利用者のより充実したホテルライフをサポートする設計になっています。

 

アプリが会員証を兼ねていますので、アプリから会員としてのポイントの登録や保有ポイントの確認ができますし、ポイントは宿泊だけでなく、ホテル内のレストランやルームサービスの利用でも貯めることができます。ユーザーの利便性がよく考慮されたアプリだといえます。

 

4.富士屋ホテルズ&リゾーツ

■アプリ限定プランやクーポンを提供

富士屋ホテルズ&リゾーツは、1878年に創業し箱根のランドマークとしても知られる富士屋ホテルを中心に、現在では各地にホテル6店舗、ゴルフ場、ミュージアムなどの施設を運営しています。その歴史ある企業が2021年11月、公式アプリをリリースしました。

 

アプリの特徴としては、アプリ限定の特別な宿泊プランや日帰りプランが利用できること、宿泊やオンラインショップで使用できるクーポンの発行を受けることができること。ダウンロードすることで施設がお得に利用できるアプリです。また、施設紹介に関する情報が充実しており、各施設だけでなく、風景やホテル自慢の食事やスイーツなど写真がふんだんに使用されていて、施設の魅力が伝わるコンテンツとなっています。

 

このアプリは、先に紹介した3件のアプリと異なり、セルフチェックイン機能は付加されていません。これは出張者などビジネスを目的とした利用者ではなく、ゆっくり休暇を楽しむことを目的とした利用者が多いという施設の性質を反映したものでしょう。

 

その一方で、限定宿泊プランやクーポンなどによって利用者を惹きつける、いわばマーケティングの側面の強いアプリになっています。ホテル側には、若年層や新規顧客へのアピール、アプリを通じた販売促進、直接予約の底上げなどの効果が期待できるのではないかと考えられます。

まとめ

ホテルアプリの活用によるセルフチェックインについてご紹介しました。事例からは、ホテル検索、予約、チェックイン、チェックアウトなどホテル利用時の必須事項がアプリによって簡素化され、利用者の利便性を高めていることがわかります。それに加え、ホテル(チェーン)ごとの異なった機能が付加されていて、そこにはそれぞれの経営コンセプトや顧客アプローチの方向性が反映されていることもわかります。

 

先に述べたように、スマホやスマホアプリが生活の一部となり、アプリ導入のコストや時間のハードルが低くなりつつあるなか、ホテル業界でのアプリ導入の流れは今後も加速していくものと思われます。自社アプリを持つことで、新たな顧客接点の獲得や、ファンの囲い込みなどの効果も期待できるでしょう。


アプリを導入する前に「どのような体験を提供したいのか?」「なにを実現したいのか?」を施設のブランディングを照らしながら考えることで、より上質な宿泊体験を提供できるのではないでしょうか。
 

 

畠山 祐季

株式会社構造計画研究所

RemoteLOCKチーム Webディレクター

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録