色気のある人は、「今まで自分は……だと思っていたけど、意外に……なんだな」と、そのことの新たな意味を見いだせるのです。
ゴッホ好きの父親の第一声「でっかいんやな」
私の父親は絵を描く人でした。ゴッホが好きなので、SOMPO美術館にゴッホの『ひまわり』を一緒に見に行きました。
その時、ゴッホ好きの父親の第一声は「でっかいんやな」でした。教科書に載っている感じでサイズを想像していたのです。私はその感想を聞いて、「やっぱり父親は絵を描く人なんだな」と思いました。
絵が面白いのは、生で見ないと本当のサイズがわからないことです。
ブリューゲルの『バベルの塔』を見た人は、みんな「ちっちゃ」と言います。
絵の中には1100人以上も描き込まれています。しかも、バベルの塔は倒れるぐらい天まで届く高い塔で、すごい迫力で大きく感じます。でも、実際の絵は小さいのです。この小ささは、生で見た人しかわかりません。
フェルメールの絵は、生で見ると光っています。これも印刷ではわからないことです。
「フェルメール展」はいつも混みます。作品の前列はご婦人たちが占めています。
前に行くと、絵が光っているのは見えません。後ろに下がってご婦人たちの頭越しに見ると、フェルメールの絵が光っていることがわかります。
又聞きの説明を仕入れて自慢しても色気になりません。生で見た意外性の中から意味を見いだすことが、その人の色気になるのです。