(※写真はイメージです/PIXTA)

個人事業を含む中小企業の多くは創業者の死後、息子や娘など身内に事業を承継しています。しかし、創業者が「どうせ子供に承継するから」と安易に考えて準備を怠ると、遺された後継者が苦労すると、牧野FP事務所の牧野寿和CFPはいいます。創業者である父の死後、1,200万円の借金が発覚した後継者・Tさんの事例をみていきましょう。

超高齢社会で増えてくる「老老相続」を回避するために

現在の年齢であと何年間生きられるか、その統計値を「平均余命」といいます。厚労省「主な年齢の平均余命2021年」によると、Tさんの母親は80歳ですので、「平均余命」はあと11.59年です。

 

もし、Tさんの母親が平均余命どおり92歳前後に亡くなった場合、そのときTさんは71歳になっています。母親からの遺産相続で相続税の納付が必要になると、この年齢から急に現金を用立てることはむずかしく、事前の準備が必要です。

 

ただ、Tさんがこの年齢で相続してもらっても、有意義な相続とはいえないかもしれません。このような「老老相続」は、その家庭に即した方法で回避したいものです。

 

上記のシミュレーションでいうと、そのときTさんの子どもは46歳と42歳になっています。つまり、TさんがTさんの子どもへの相続を考えてもいい時期です。

 

冒頭の中小企業庁「令和3年中小企業実態基本調査」中小企業の社長(個人事業主)の調査では、社長の「在任期間」の構成比では「30年以上」が1番多く30.9%。また同調査の「事業承継の意向」構成比では、「いまはまだ事業承継について考えていない」が最多で41.2%となっています。

 

いくらTさんの父親が頑固おやじでも、このような統計数値にとらわれて、「どこの会社も同じだからしかたない」ではなく、自社独自の事業承継プロジェクトを作成して、そのための費用を準備しておくことが必要です。

 

中小企業といえども、社長が個人的に借入をしては、社長の家計が回らなくなります。その果てに、会社にまで悪影響をおよぼしかねないのです。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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