(※画像はイメージです/PIXTA)

少子高齢化の進展で人口減少が続く日本ですが、その一方で住宅数は増加を続けています。なぜこのような矛盾が起きてしまうのか、この現象が将来にわたってどのような懸念やビジネス上の問題を起こすのか考察します。

日本の人口減少、統計から厳しい状況が明らかに

読者の皆さんもご存じの通り、日本は少子高齢化が進展し、人口も減少が続いています。総務省統計局の2015年から2021年の人口推移から、厳しい状況が明らかになっています。

 

[図表1]総人口及び日本人人口の推移 (2015年~2021年)

 

[図表2]総人口の人口増減数及び人口増減率の推移(1950年~2021年)

 

[図表3]総人口の推移(1990年~2021年)

 

総務省統計局によれば、2021年(令和3年)10月1日現在の総人口は1億2550万2000人で、2020年10月から2021年9月までの1年間に64万4000人(-0.51%)の減少。

 

わが国の総人口は2005年に戦後初めて前年を下回ったあと、2008年にピークとなり、2011年以降、11年連続で減少。2021年は64万4000人の減少となり、減少幅は比較可能な1950年以降過去最大に。

 

日本人人口は1億2278万人で、前年に比べ61万8000人(-0.50%)の減少となり、減少幅は10年連続で拡大――。

 

これらの数字を見れば「人口減少」「少子高齢化」が非常にシリアスな問題として感じられると思います。

減少が止まらない人口、増加し続ける住宅

しかし、これほどの人口減がありながら、私たちが暮らす「住宅」は増加傾向にあるのです。総務省が公表している下記図表4を見てみましょう。

 

*印の数値は、沖縄県を含まない。以下全図において同じ。
[図表4]総住宅数及び増加率の推移-全国(昭和38年~平成30年) *印の数値は、沖縄県を含まない。以下全図において同じ。

 

平成30年10月1日おける総住宅数は6,242万戸で、平成25年時点から179万戸増加。昭和63年から平成30年までの30年間で2,041万戸、48.6%の増加です。

 

人口は減少しているのに、住宅そのものが増え続けている理由はどこにあるのでしょうか。図表5を見てみましょう。

 

[図表5]空き家数及び空き家率の推移-全国(昭和38年~平成30年)

 

平成30年の空き家は846万戸であり、平成25年と比較しても26万戸(3.2%)の増加です。空家数は増加の一途で、昭和63年から平成30年までの30年間で、延べ452万戸(114.7%)増加していることが見て取れます。

 

このような現象には複数の要因が考えられますが、おそらく最も大きいものは、住宅・建設業者の収益構造ではないでしょうか。

 

分譲マンションや建売住宅は、賃貸住宅よりも効率的に利益が得られるため、そちらを優先的に建築・販売するビジネスが広く展開されています。一方の政府も、ここ最近は中古住宅の購入を後押しする政策を打ち出しているものの、以前は補助金や住宅ローン減税など、新築住宅の購入を後押しするものに偏っていました。

 

増え続けた「空き家」はいずれ老朽化し、廃屋となります。廃屋の始末には多額のコストがかかるだけではありません。周辺地域の治安悪化リスクも上昇させ、住民の生活に多大な悪影響を及ぼすことになるのです。

 

高度成長期には、新築のマンションや建売住宅の建設・販売といった「おいしいところ」だけに注力するビジネスでも大きな問題はありませんでした。しかし、人口減少が顕著となり、経済が縮小し続けている現在の日本において、過去と同じビジネスモデルを踏襲していては、いずれ壁にぶつかってしまいます。それにより、建築業者も購入者も、結局自らの首を締めることになりかねません。

 

ここ数年「持続可能型」というワードが注目されていますが、現時点では、ビジネスにおいても、人々の価値観においても、そこまで浸透・定着しているとはいえません。しかし、そろそろ本格的に「持続可能型の新しいビジネスモデル」の追求と実現に取り組まないと、取り返しのつかないことになるのではないでしょうか。

 

激震! コロナと不動産 価値が出るエリア、半額になる物件

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榊 淳司

扶桑社

地殻変動が起きた2020年の不動産業界。2019年の自然災害、2020年の新型コロナ禍の影響で、タワーマンションや郊外のベッドタウン、商用不動産の価値はどのように変化していくのか? 2021年以降に不動産の購入を検討している人…

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