「物価上昇」⇒「通貨下落」という伏兵
「金利が高い国の為替相場は上がる」⇒「だから金利と為替益の両方が手に入る」⇒「その代表がブラジルレアルである」。こんな三段論法だけを多くの人が信じたんだね。
しかし実際にはこけた。基準価額がどんどん下がっていった。そして「こんなはずじゃなかった」となった。
それは、もう1つ決定的に重要な要素を忘れていたんだ。順に話していくね。
■高金利→インフレ率が高い
1つ目。高金利の国のインフレ率は、ほぼ例外なく高いっていうことだ。物価が上がると金利も上がるという仕組みがある。
図表2をちょっと見てもらいたい。主な国の物価上昇率と金利の関係をプロット(点描)した分布グラフだ。これは何を示しているかわかるかい? 物価上昇率が高い国の金利は決まって高いってことだ。
たとえば、日本やユーロでは、物価も上がらない代わり金利も低い。そこへ行くとインドやブラジルなどは、インフレ率も高いし金利も高いよね。
物価が上がれば金利も上がるという原則があるけど、そのことを別の形で示したものだ。つまり「金利が高ければその国のインフレ率は高い」ってことなんだ。
さっき、ブラジルの金利が高かったって話した。じゃあ、そのときブラジルの物価がどうなっていたかっていえば、実はインフレ率が高かったってことなんだ。
じゃあ、ここで図表3を見てもらおうか。物価が上がれば金利が高くなるってことは図の①だね。それから②のメカニズムもすでに話した。金利が高くなれば、その国の通貨が高くなるってこと。この2つはいずれも直感的にわかりやすいよね。
■インフレ率が高い→為替は下落
さて、これからが応用問題だ。それが③なんだ。このメカニズムが今話しているテーマの勘所、つまり最大のポイントだったんだ。
つまり、インフレ率が高ければ、その国の為替は下落するのが基本だっていうところだ。で、結論から言うと実際ブラジルレアルは下落した。それでブラジル国債を大量に組み入れた外資ファンドは相当の為替差損を被り、多くの投資家はがく然となったんだね。
実は②のメカニズムだけじゃなく、③の要素を考えに入れなくっちゃダメだったんだ。どういうことか?
短期的には、金利が高ければ為替相場は上がるっていう②のメカニズムが働くことが多い。でも、中期的にみればインフレ率が高い通貨は下落する、っていう影響力を示している③のエネルギーがとても強いんだ。
ちょっと変なたとえだけど、ボクシングでもボディブローはすぐには効かないことが多いよね。でも、回が進むにつれてどんどん体力を削いでいくだろう。③はあんなイメージなんだ。
あ、そう言えば、物価が上がれば通貨は下がるっていうこの③のメカニズムはまだ話していなかったね。
③のテーマは、投資する上ではとても大事なのに、多くの人にとっては盲点になっているので、ちゃんと話しておこう。