(※画像はイメージです/PIXTA)

突然の病気やケガ等で働けなくなり治療費や生活費に困窮したとき、有効な手段の一つが、加入中の「生命保険」を売却してまとまったお金を得ることができる「生命保険の買取」です。イギリス・アメリカでは生活が困窮したときのセーフティネットの一つとして根付いており、日本でも最近、注目され始めています。本記事では、今後、わが国で「生命保険の買取」が普及していくうえで想定される課題と、その解決の方向性について解説します。

保険契約者の権利を守るためのルール

上記のように、保険契約の売却は加入から5年間は禁止されているのですが、実際にはその禁止期間の間に余命宣告を受けることもあります。また、受取人に指定していた家族が亡くなって、保険契約を継続する意味を失うこともあるでしょう。

 

そこで設けられているのが「売却禁止期間の除外規定」です。保険契約者がプロバイダーに対して以下の事項を証明できれば、売却禁止期間の制限は除外されます。

 

・保険契約者または被保険者が末期または慢性疾患であること

・保険証券の発行時点でバイアウトなどによって保険契約者または被保険者が保有していた株式を売却した場合

・配偶者が死亡した場合

・保険契約者が配偶者と離婚した場合

・定年退職した場合

・身体的または精神的障害があり常勤雇用を維持できないと医師が判断した場合

・裁判所が保険契約者の破産を認め、更生を求める申立を承認し、保険契約者の資産を管財人に指定する判決が下った場合

 

個人投資家が詐欺に遭わないためのルール

アメリカでは個人投資家を標的とした大規模な買取詐欺事件も起きました。被害者29,000人以上、損失額は10億ドル以上。被害に遭った人のほとんどが、高齢の退職者で、老後に備えた貯金を生命保険の買取会社にだまし取られました。

 

そのからくりは、買い取った保険契約の保険料に充てる資金として個人の投資を募るというもので、集めた資金は買取会社を名乗る企業の役員の遊興費に消えていました。

 

1990年代にはこのように個人投資家が生命保険の買取市場に押し寄せたためにトラブルが多発し、以来、業界団体はプロバイダーに対して個人投資家からの投資を受け入れないよう指導しています。

個人情報保護のルール

生命保険の買取にあたっては、被保険者の医療情報や財務情報といった個人情報が必要になります。ただし、これらの情報をもとに身元を特定されたり拡散されたりすることを防ぐ必要があります。

 

そこで、保険契約者とプロバイダーは事前に書面で情報開示についての合意を交わします。当然ですが、プロバイダーには守秘義務が課されます。

 

医療情報等は、プロバイダーやブローカーにとって、健康状態を判断する目的で接触する必要があるものですが、それ以外の金銭的利害関係をもつ者には開示されません。

 

まとめ

ここまで「生命保険の買取」について、日本への導入を念頭に、想定される課題とその解決法を述べました。筆者は、患者(生命保険の契約者・被保険者)のために「生命保険の買取」が日本でも普及するよう願い、機会をいただいてこのしくみの解説などをしています。

 

次回は、これまで筆者が行った講演等における質疑応答をもとに「生命保険の買取FAQ」をまとめます。

 

濱崎研治

株式会社リスク・マネジメント研究所

代表取締役

 

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