(※画像はイメージです/PIXTA)

突然の病気やケガ等で働けなくなり治療費や生活費に困窮したとき、有効な手段の一つが、加入中の「生命保険」を売却してまとまったお金を得ることができる「生命保険の買取」です。イギリス・アメリカでは生活が困窮したときのセーフティネットの一つとして根付いており、日本でも最近、注目され始めています。本記事では、今後、わが国で「生命保険の買取」が普及していくうえで想定される課題と、その解決の方向性について解説します。

保険会社が保険契約者に訴えられた裁判

アメリカでは、生命保険契約の売却が可能であることを保険外務員が説明しなかったことが「詐欺的隠蔽」にあたるとして、2014年にカリフォルニア州で裁判が起こりました。というのは、カルフォルニア州は前述のNCOILが2007年に発表した生命保険消費者情報開示モデル法を採用していなかったのです。当時、このモデル法を採用していたのは7州しかありませんでした。

 

高齢の夫婦が2004年に保険金700万ドルの生命保険に加入し、これまで数10万ドル超の保険料を支払ってきました。しかし、運用の結果が思わしくないため、担当の外務員に今後の対応策を尋ねたところ、外務員はそのまま保険料の支払いを続けるか、あるいは部分解約(保険金の減額)しかないと回答しました。

 

結果として、夫婦は保険金700万ドルのうち500万ドル分を部分解約して、最終的に保険金を200万ドルにすることとしました。ところが、あとになって、夫婦は部分解約した保険金500万ドル相当の部分は投資家に売却できることを知り、外務員から説明がなかったことによる損害が生じたとして、保険会社を訴えました。

 

この裁判は全米中で話題になり、最終的に和解による解決となりました。この和解にあたって裁判所は、保険会社が保険契約者に譲渡できるという選択肢を開示しなかったとき、保険契約者と保険金受取人の両方に金銭的な損害が生じる可能性があることを認めました。

 

日本国内においても、保険の営業マンはこの裁判に注意する必要があります。顧客にとって有益であると思われる選択肢の説明を怠ったとき、その責任を誰が負うかを会社の上司に尋ねてみる価値がありそうです。

 

転売目的の保険契約を防ぐためのルール

アメリカでは2000年代後半、保険外務員が金融業者と手を組んで高齢者に声をかけ、買取り会社への売却を目的として保険を勧誘するSTOLI(Stranger-Originated Life Insurance)が多発しました。

 

こうした場合の保険契約は死亡保険金が高額であることが多く、日本円にして数十億円にのぼるケースもありました。2005年から2010年の間に150件以上のSTOLI訴訟が起こっていますが、その多くは保険会社が提訴したものです。

 

制度の悪用を防ぐため、「モデル法」に以下の事柄が定められました。

 

・保険加入から5年間は売却禁止

・保険契約者の買取契約の取消し可能期間を売却代金の受領日から 15 日を30 日へ延長

・プロバイダーとブローカーの資格要件に保証金 25 万ドルの供託を設定

・保険の募集広告に「無料」「保険料支払い費用ゼロ」といった表現を用いることを禁止

 

また、これらに違反した場合は、民事上の責任を問われるだけでなく刑事罰も科せられると規定しています。

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