インボイスの発行義務が免除される取引って?
インボイスの発行が免除される「5つのパターン」
事業の性質上、インボイスを発行することが困難なため、その発行義務が免除される取引があります。具体的には、次の5種類の取引が免除対象です。
1.3万円未満(税込)の公共交通料金
1度の購入時に3万円未満(税込)の公共交通料金については、インボイス発行が免除されています。また、交通機関を利用した際に、一定の事項を記載した帳簿を保存すると、仕入税額控除が認められます。
ただし、「1度の購入時」というのがポイントです。同時に購入したのであれば、複数人の交通費をまとめて支払った場合も該当します。
例えば、東京から名古屋間の新幹線片道切符(1人当たり11,300円)を同時に3人分購入したら、交通費の合計は33,900円です。したがって、交通費が3万円を超えるため、インボイスの発行が必要です。
しかし、1人分ずつの交通費を別々に購入すれば、それぞれ支払いは3万円未満になるため、インボイスの発行が免除されます。
2.切手などを貼って郵便ポストに投函される郵便・貨物サービス
郵便局などで切手を購入するときは非課税取引なので、インボイスの発行が免除されます。一方、その切手を貼ってポストに投函するときは課税取引になりますが、ポストに投函する際に、タイミングを合わせてインボイスを発行するのは実質的に不可能ですので、インボイスの発行が免除されます。
ちなみに郵便ポスト以外に、例えば、窓口での郵便・貨物サービスの提供の際は、インボイスの発行義務は免除されません。
3.自動販売機や無人販売機による3万円未満(税込)の販売
ここでいう「自動販売機」とは、代金の支払いと商品やサービスの提供がワンストップで自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで取引が完結するものをいいます。ジュースやお菓子の販売機はもちろん、コインランドリー、自動写真撮影機、金融機関のATMサービスなどが該当します。
なお、ラーメン店の入口にある自動券売機や、コンビニエンスストアやスーパーマーケットにあるセルフレジは、代金の支払いは自動で行われるものの、商品やサービスの提供まで完結できるわけではないので、ここでいう「自動販売機」には該当しません。
4.出荷者等が卸売市場で生鮮食品などを売るとき
農家や漁師など生鮮食品の出荷者が、卸売市場で販売する卸売業者に委託した場合に限り、インボイスの発行は免除されます。
5.農協、漁協、森林組合などに委託して売るとき
「無条件委託方式」かつ「共同計算方式」の場合に限り、インボイスの発行は免除されます。
「無条件委託方式」とは、生産者が農林水産物を農協などへ出荷するときに、売値や出荷先、出荷時期などについて指定することなく、販売の仕方を農協などに任せることです。
また、「共同計算方式」とは、一定の期間における農林水産物の対価については、その農林水産物の種類、品質、等級といった、区分ごとに平均した価格をもって算出した金額をベースに精算することです。
<ポイント>
1度の購入が3万円未満(税込)の公共交通料金はインボイスの発行が免除。また、一定の事項を記載した帳簿を保存すると、仕入税額控除が認められます。
※【マンガ】『インボイスは登録する・しない…どちらが得か』を読む
川崎 晴一郎
公認会計士/税理士
KMS経営会計事務所/株式会社KMS 代表