ただし、本件では従業員と連絡がとれずヒアリングもできない事情があるようです。
しかし、このような場合であっても、会社には従業員と連絡しようとしたことの証拠固めが求められます。
具体的な手段としては、従業員に対しメールやショートメッセージ(SMS)を送信する、履歴書、職歴書、身元保証書、賃貸借契約書等に記載されている連絡先に電話する、直近の居住地と推察される住所に手紙を送る、居住地の郵便ポストの状況やライフライン(ガス・電気メーター等)の稼働状況を確認・記録するなどが考えられます。
このような調査の結果、従業員と直接的にあるいは従業員の親族や同居人等を通じ、再び連絡がとれれば前述の通りヒアリング等を開始しましょう。
他方、連絡が取れなければ、配達証明書付内容証明郵便や特定記録郵便を利用してお手紙を送付することが考えられますが、この辺りまでくると弁護士に相談する必要性が相当高い状況です。
就業規則の整備が重要課題です!
本件では、就業規則に、休職規定やいわゆる自動(当然)退職事由としての無断欠勤、行方不明、休職期間満了等が整備されていませんでした。
そこで、雇用契約を終了させるための方法を、懲戒解雇とせざるを得ないと判断したのかもしれません。
しかし、懲戒解雇の実務上のハードルの高さに鑑みれば、就業規則を整備したほうが法的リスクも低くなりかつ費用的にも優れているといえるでしょう。
最後に、本件では、経歴詐称疑惑も浮上しています。この点については、学歴、職歴、病歴、退職歴、犯罪歴など、何の詐称なのか、また、その詐称が採用の条件・前提であったか否かが重要です。
そして、これらを判断するため証拠資料として、採用選考時に従業員から提出された資料はキチンと保管しておきましょう。
【参考条文:労働契約法第15条】
「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」