税区分の配慮なく「一括値引き」した場合
例えば、お客様がスーパーマーケットで標準税率(10%)の商品と軽減税率(8%)の商品を一緒に購入したときに、1,000円の割引クーポンを使用することがあります。
このようなケースを「一括値引き」といいます。
この場合、各税率ごとの合計金額(値引き前の税込価格)を算定したあとに、値引き額である1,000円(クーポンは通常税込価格)を各税率に区分した上で、それぞれの税率ごとに値引き処理をします。
各税率ごとの値引き後の合計金額(税込価格)を算定したら、その金額を用いて各税率ごとの消費税を計算します。
ところで、ここで問題になるのが、割引クーポン1,000円分の各税率への区分の方法です。値引き前の税込販売金額の割合で按分するのか、8%の商品の合計金額から優先して引くのか、あるいは10%の商品の合計金額から優先して引くのか、どうするべきでしょうか。
結論を申しますと、どの方法で区分するのかは、インボイスを発行する側のスーパーマーケットが自由に決められます。
一番有利な方法は10%の商品の合計金額から引くことです(納めるべき消費税が少なく計算されます)。なお、どの税率の合計金額からどれだけ値引きしたのかは、レシートなどの簡易インボイス(またはインボイス)に明記しなければなりません。
値引き額をどちらの税率の合計金額から差し引くか決めていない場合は、値引き額を各税率ごとの値引き前の税込販売金額の割合で按分計算することとされています(システムの都合などにより、実務ではこの方法が一番オーソドックスかもしれません)。
一括値引きのレシートの記載方法は2つあります。一番オーソドックスな按分計算の例をベースに具体例を用いて見てみましょう。
例えば、スーパーマーケットで鮪1,296円(軽減税率対象)、棚4,400円を購入し、1,000円の割引クーポンを使用した場合。
どちらの税率から値引きするという区分なしで一括値引きをするときは、税率10%の商品と税率8%の商品の合計販売価格から合わせて、1,000円分を値引くことになります。
このとき全体の税込価格(4,400円+1,296円=5,696円)のうち、税率10%の商品の税込価格(4,400円)が占める割合と、全体のうち税率8%の商品の税込価格(1,296円)が占める割合で、1,000円を按分します。
値引き額を按分する計算
税率10%対象:4,400円/5,696円×1,000円=772.471…→772円
税率8%対象:1,296円/5,696円×1,000円=227.528…→228円
↓
値引き後の税込価格の計算
4,400円−772円=3,628円
1,296円−228円=1,068円
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川崎 晴一郎
公認会計士/税理士
KMS経営会計事務所/株式会社KMS 代表