山に登らないと先の景色が見られない
塚越さんは起業することを決意します。
実際に事業をスタートします。すると最低の生産量を調整するのに難航します。
3年間は、毎年6000リットル以上生産しなければ醸造許可が下りないとのこと。年間6000リットルとは、1日あたり約50本売らなければならないということです。生産量が少ないと、価格のおり合いがつかないことがわかりました。
また諸々の経費がかなりかかることがわかり、塚越さんは追い込まれます。老眼の進んだシニアには帳簿記録はとてもキツイ作業です。
しかし、教え子やその保護者、先輩たちが、自分の得意分野を活かしボランティアで力を貸してくれ、何とか乗り切ることができました。
「いやーこんなに大変だとは思いませんでした。知らないからできたこと。知っていたらやりませんでした」
と、塚越さんは振り返ります。
最初は赤字経営でしたが、持ち前の行動力で地元の道の駅やスーパーに販路を開拓。今でも毎日SNSを使って、クラフトビールの紹介を行っています。
元校長先生が起業したということで、次第に新聞社やテレビ局などマスコミの取材が入りだして徐々に知名度が上がってきました。今では採算がとれるようになりコロナ禍の中、黒字に転じました。人件費がかかるところ、ボランティアで来て下さるシニアの方もあらわれだしました。
先の兆しが見えてきて思うことがあります。
「山に登らないと先の景色が見られない。壁の向こう側には知らない世界がある」
一歩踏み出すことは大切なんですね。
「将来は法人化して、シニアが働ける工場に拡大していきたい。シニアが生き生きして楽しく働けるよう頑張っていきたい」
そう思って頑張り続け、令和4年1月、株式会社「結城麦酒」を設立するまでこぎつけました。
「瀬戸内寂聴さんは50歳すぎに得度をして99 歳まで人のために生きてこられた。日野原重明先生も常に新しいことに取り組んでこられた」
「自分も倣って、法人化したのでこれからは広い敷地に工場を移し、従業員確保をする。そしてさらに事業を大きくし後継者の育成にも力を入れていきたい」
起業のキーワードは〝夢を語る〞こと、夢を語らなければ実現しない、と塚越さんは振り返ります。その顔は、かつて子どもの前で輝かしい未来を語っていた校長先生の笑顔そのものでした。
【髙橋の感想】
塚越さんは定年後、再雇用の道を選ばれましたが、ほどなく独立、起業されたケースです。再雇用を選択したものの、納得がいかず、自分のやりたいこと、思いを優先し起業されました。まったく畑違いからの出発。厳しい中、まずは人に夢を語ることで、自分を追い込み、夢の一歩を実現されました。
シニアの定年後は、人に貢献していきたい、人のために何かをやりたい、と思われる方が多いと思われます。塚越さんも、日頃から持っていた自分の信条に基づき、改めて自分の人生に思いをはせて決断されました。
塚越さんは地元で育ち働いてこられたので、地元愛を強くお持ちです。地元結城市の産業を活発化させたい、貢献したい。そして生徒たちに夢を語ってこられたので、今後はシニアを生き生きさせたい、これまで関わってきた生徒たちに背中を見せたい、そんな思いに満ち溢れています。
自分の夢を追いかけると、その思いに人が集い、協力してくれることを教えていただきました。
この地元産のクラフトビールを飲んでみました。大手ビール会社には出せない深い味に驚きました。塚越さん、美味しかったです!
頑張って下さい、応援しています!
株式会社結城麦酒 https://www.yukibrewery.com/
髙橋 伸典
セカンドキャリアコンサルタント
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