▲トップへ戻る
信託設定後の米国不動産から生じた損益への税務

前回は、米国の居住者が受益者となり、日本の受託者に信託した「日本の株式」の配当や譲渡益にかかる税金について説明しました。今回は、自身を受益者とした信託設定後の米国不動産に関する損益通算が日本において可能かどうかを見ていきます。

プロベート回避のために信託設定したが・・・

【質問】

日本の居住者である甲は米国に不動産(貸しビル)を保有しています。米国弁護士からのアドバイスで甲に相続が開始した場合の米国でのプロベートの手続きを回避するため、米国不動産を信託設定した方がよいと言われました。米国不動産を信託設定する場合、日本の税務の観点から留意すべき点があれば教えてください。

 

【ポイント】

信託設定後の米国不動産から生じた損失は他の所得と通算することができないので留意が必要です。

損失は損益通算できないが、所得には日本の課税が発生

【解説】

例えば甲が甲を受益者として米国不動産を信託設定した場合、日本の税務上、信託設定後も甲は米国不動産を引き続き保有しているものとして取り扱われ、当該信託はいわゆる受益者等課税信託に該当します。

 

通常、甲は日本国外に保有する不動産であったとしても当該不動産から生じた損失があれば、当該損失を甲の他の所得と通算することができます。

 

一方、受益者等課税信託から生じる不動産所得の損失は生じなかったものとみなされるため、甲が米国不動産を信託設定し、当該信託設定後の不動産から損失が生じた場合、当該損失は生じなかったものとみなされ、甲の他の所得と通算することができなくなりますので留意が必要です。

 

損失が生じた場合には、損益通算はできませんが、所得が生じた場合には日本の課税が発生します。

 

なお受益者等課税信託から生ずる不動産所得を有する個人が確定申告書を提出する場合には、確定申告書にその年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類のほか、当該信託に係る次に掲げる項目別の金額その他参考となるべき事項を記載した信託から生ずる不動産所得の金額の計算に関する明細書を信託ごとに作成し、当該申告書に添付しなければならないものとされています。

 

①総収入金額については当該信託から生ずる不動産所得に係る賃貸料その他の収入の別

 

②必要経費については当該信託から生ずる不動産所得に係る減価償却費、貸倒金、借入金利子及びその他の経費の別

ウィザーズ・ジャパン(Withers Japan)税理士法人 代表社員・パートナー 税理士

早稲田大学政治経済学部卒業。大原簿記学校(相続税法科講師)、勝島敏明税理士事務所(現テロイトトーマツ税理士法人)、税理士法人中央青山(現PWC税理士法人)での勤務、ホワイト&ケース税理士法人パートナー及びモリソン・フォースター税理士法人パートナーを経て、2015年5月よりウィザーズ・ジャパン税理士法人の代表社員・パートナーに就任。
来日外国人等クロスボーダーの所得税・相続税に関するコンサルティング、クロスボーダー投資、クロスボーダーM&A、金融商品等に関するコンサルティングその他の国際税務コンサルティング業務に従事。
主な共著書等に、『Q&A投資事業有限責任組合の法務・税務』『知的財産に係る税務戦略』(以上、税務経理協会)、"Tax Planning for International Mergers, Acquisitions, Joint Ventures and Restructuring" (Kluwer Law International) , "Private Client Practical Law Multi-Jurisdictional Guide Country Q&A" (Japan Practical Law Company)などがある。

Withers LLP/ウィザーズ・ジャパン(Withers Japan )税理士法人
Withers LLPは英国ロンドンに本拠を置く100年以上の歴史を持つ国際法律事務所。米国・ヨーロッパ・アジア等にオフィスを持ち、全世界に180名以上のパートナー、1,000名以上のスタッフを有し、富裕層向けの税務、信託、エステートプランニング等のサービスを中心とした様々な法務・税務サービスを提供している。
ウィザーズ・ジャパン税理士法人はWithers LLPの日本におけるサービスの拠点として2015年5月に設立。信託等を利用したエステートプランニングに関するアドバイスの他、クロスボーダーM&A、組合・信託等を利用したクロスボーダー投資等に関する税務アドバイス等クロスボーダー取引に関する様々なコンサルティングサービスを提供している。

問合せ:TK.enquiries@withersworldwide.com

著者紹介

ウィザーズ・ジャパン(Withers Japan)税理士法人 代表社員・パートナー 税理士

一橋大学社会学部卒業。英国大手通信会社タックスディレクター、アーンストアンドヤング税理士法人パートナー及びモリソンフォースター税理士法人パートナーを経て、2015年5月よりウィザーズ・ジャパン税理士法人の代表社員・パートナーに就任。
グローバルタックスミニマイゼーション、クロスボーダーM&A、組合・信託等を利用したクロスボーダー投資、クロスボーダーのエステートプランニング、その他タックスヘイブン対策税制・租税条約等のクロスボーダー取引に関するコンサルティング業務に従事。
主な共著書等に、"Japan Taxation Chapter" "Japan Chapter, Investment Funds"(IBFD)などがある。

著者紹介

連載Q&Aで学ぶ「クロスボーダー信託」の税務

 

Q&A クロスボーダー信託の税務

Q&A クロスボーダー信託の税務

水谷 猛雄 富田 千寿子

税務経理協会

米国をはじめとする諸外国では、次世代へのスムーズな財産の承継を計画的に準備する、いわゆるエステートプランニングが盛んであり、その手段の一つとして信託(トラスト)を利用するのが一般的となっています。日本でも平成19…

 

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧