受益者が米国居住なら日本の課税が減免される可能性も
【質問】
米国の居住者であるXはXを受益者とし、日本の居住者であるXの子Aを受託者として日本法人である甲社(非上場会社でいわゆる不動産保有法人には該当しないものとします)の株式25%を信託しました。甲社株式からの配当や譲渡益についての課税関係はどのようになるのでしょうか。
Xは日本に恒久的施設を有しないものとします。
【ポイント】
受益者等課税信託に該当し、受益者であるXが配当や譲渡益を得たものとして課税関係が決定されます。Xが米国の居住者である場合、日米租税条約の適用より日本の課税が減免される可能性があります。
受益者等課税信託に該当するケースとは?
【解説】
本件のような信託は税務上、受益者が受益者としての権利を現に有しているため、いわゆる受益者等課税信託に該当します。
受益者等課税信託に該当した場合、受益者は当該信託に係る信託財産を直接保有するものとして取り扱われます(いわゆるパススルー課税)。
したがって、本件においてはXが甲社株式を保有しているものとして取扱われ、甲社株式に係る配当、譲渡益についてXに対して所得税が課税されることになります。
甲社株式の名義人はAとなりますが、所得税法上の甲社株式の所有者はXであり、Xは米国の居住者である場合、甲社株式に係る配当・譲渡益の課税関係は以下のとおりとなります。
(1) 配当
非上場会社から非居住者への配当であるため、国内法により20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されますが、当該所得税等は日米租税条約により10%に軽減されます。
(2) 譲渡益に係る課税関係
Xは甲社株式の25%を保有しているため、いわゆる事業譲渡類似株式に該当し、原則として日本の所得税及び復興特別所得税15.315%が課税されます。ただし、当該所得税等は日米租税条約の適用により免税となります。