(※画像はイメージです/PIXTA)

コロナ禍、収入の面でもし不安があるなら、塾なし受験のメリットは大きいと考えられます。お金と時間が節約できて、子どもが成長もする。これなら「やらないという選択肢はない」のではないでしょうか。塾なしで長男を志望校に入学させた塚松美穂氏の著書『「塾なし」高校受験のススメ』(プレジデント社)で解説します。

塾なしでも第一志望合格が目指せる

我が家で最後まで検討事項に上がったことは、夏期講習や冬期講習にいくかどうかでした。休暇中はまとまった時間をとることができるからです。通塾しないにせよ、受験生らしく休暇中はライバルと並んで机に向かって刺激を受けるほうがいいのでは、などと考えました。

 

周りと違うことをしていると、時々、不安な気持ちになるものです。最後の冬期講習の申し込み期限が迫り、本人がどうしようかなと迷っていたので、担任の先生に相談もしましたが、先生の答えは、「今まで自分でできているのだから」と、どちらかというと否定的な回答でした。

 

すでに自宅学習のペースを確立していると、その計画を進めなければならず、逆に、塾の講習に時間を割くことが難しい状況でもありました。時間がないというよりは、やるべきこと・やりたいことが、はっきりと見えていたので、短期講習を受講すれば、恐らくペースが乱れ、自分の計画が狂ってしまうだろうと感じていたようです。最終的に、「いかないで最後まで自分でやる」と息子自身が決めました。

 

安くない講習代金を払い、自分の計画を乱してまで講習を受けることに価値があるか、さらに、ポッと単発で入れた短期講習がどれほど受験に役立つのか、家族で検討した結果でした。こうして、息子は夏期講習も冬期講習も、一度も受講することはありませんでした。こういった季節講習費は安いものではありませんので、経済的にはずいぶん違います。

 

自分たちの塾なし受験計画を信じて、最後まで戦い抜きました。

 

結局のところ、「自分のペースで受験勉強を進められる」ことは、効率的で最も大きな強みでした。自宅と塾の往復にかかる時間や、集団学習のペースに乱されることなく、自分に必要な勉強を自宅で勉強すれば、気分転換の時間も隙間に作れます。うまくペース配分をしながら、息子は入試日を迎えられました。

 

塾なし受験をやってよかったと、心から思います。

 

東京に住んで、もうすぐ30年になりますが、私は地方の出身で、地方出身者から見る東京(首都圏)の私立学校の状況は特別です。私たち夫婦が地方出身だったから、都会の受験競争を過度に感じ、不必要な競争をすることよりも、家族で塾なし受験を選んだのかもしれません。

 

もうひとつ、我が家の子どもたちによい影響与えているのが「旅」だと思います。遠くでなくても近場でも、観光地であってもそうでなくても、都会でも田舎でも、日常とは違う土地で時間を過ごす中に、たくさんの学びがあります。習い事にお金を払う以上に、時々旅を経験させること、これは本当によい教育だと感じます。

 

旅先は両家の実家への帰省や、その近辺になることが多いですが、例えば、受験の気分転換にと、中3の秋の3連休も、長野旅行に出かけました。息子は、受験生らしく、夜、宿では参考書を開いて勉強を始め、隙間時間に単語や漢字を覚えるなどして、旅の途中も自発的にうまく時間を使って勉強していました。

 

オンとオフの切り替えができるのは、仕事をしていると必要な要素でとても大切なことだと感じています。自己管理ができるのは、大人になったときの強みです。

 

塾代がかからないこともあり、お金を子どものためにどう使おうか、夫婦で一致したのは海外旅行でした。息子が中2の冬休み、「受験生になる前に行っておこう」と、家族でオーストラリアを旅行しました。シドニーとアデレードを起点に2週間の滞在。新型コロナウイルスの影響で海外への旅行が難しくなった今となっては、思い切って行っておいてよかったと感じています。

 

子どもたちは初めての海外で新しい発見・体験をし、たくさんの刺激を受けました。オーストラリアでの滞在から、息子はますます英語が好きになったようです。

 

「旅をする」体験は、子どもの将来に必ずプラスになると思います。家族の思い出もたくさんできます。国内でも海外でも、どこでもいいです。コロナの収束後、自由に動けるようになったら、ぜひ家族旅行に行く計画を立ててほしいです。家族で旅行ができるのは、本当に限られた時期だけ。高校生になった息子はもう難しいかもしれませんが、小6の娘を連れてまた旅に出たいと思います。

 

コロナ禍、収入の面でもし不安があるなら、塾なし受験のメリットは大きいと思います。お金と時間が節約できて、子どもが成長もする。これなら「やらないという選択肢はないのでは?」と思います。

 

私たちのような考え方はメジャーではないかもしれませんが、高校入試は、実はゴールでもなんでもなく、未来への通過点にすぎません。ともすれば、周りと違う選択をする「勇気」を出してやってみるのもアリではないでしょうか。

 

「塾なしでも第一志望合格が目指せる」とわかっていただけたなら幸いです。あとは、どう進めていくかという「方法」を参考にしていただいて、ご家族それぞれの「塾なし受験プロジェクト」を進めていってほしいと思います。

 

塚松美穂
ライター・教育アドバイザー
学習支援コーディネーター

 

 

※本連載は塚松美穂氏の著書『「塾なし」高校受験のススメ』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「塾なし」高校受験のススメ

「塾なし」高校受験のススメ

塚松 美穂

プレジデント社

たくさんの習い事に、塾を掛け持ちしている小学生。中学生になれば、学習塾にいくのが当たり前の世の中で、周りを見れば塾通いのクラスメートばかり。「塾にいかないと子どもたちは希望する進路に進めないのだろうか」という疑…

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