(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年11月11日、参議院本会議において、国家公務員(一般職)の月給とボーナスを引き上げる法律が可決・成立しました。これは、8月8日の「人事院勧告」を受け入れて行われたもので、給与の引き上げは3年ぶりとなります。本記事では、人事院勧告について、どのようなものなのか、どんな問題点があるのか、解説します。

人事院勧告とは

人事院勧告は、人事院が年1回、国会と内閣に対し、国家公務員の一般職の給与・ボーナス等について、必要な見直しを勧告する制度です。正しくは「給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告」(国家公務員法3条第2項)といいます。

 

なお、人事院勧告は国家公務員の給与等を対象としていますが、地方公務員についても人事院勧告の内容に沿って給与等の改定が行われることになっています(地方公務員法14条参照)。

 

人事院勧告は、公務員の労働基本権(憲法28条)制約の代償措置です。すなわち、公務員は、ストライキ等の争議の禁止をはじめとして労働基本権が制約されており、賃金や勤務条件に関する交渉ができません。そこで、その代償として、人事院が公務員の待遇等についての意見を具申する人事院勧告が設けられているのです。

 

人事院は、内閣から独立して職務を行ういわゆる「独立行政委員会」です。公務員の人事管理に関する政治的な影響を排除するためと、高度な専門技術性から、内閣からの独立性が認められています。なお、独立行政委員会の例としては他に「公正取引委員会」「国家公安委員会」「中央労働委員会」等があります。

人事院勧告を行う際の手法とは

人事院勧告においては、公務員の給与について、民間給与との格差を埋めること(民間準拠)が基本とされており、具体的には、以下の2つを民間給与と比較して用いています。

 

・月給(月例給)

・ボーナス(期末手当・勤勉手当)

 

まず、月給の比較については、国家公務員と民間の4月分の給与を調査して精密な比較を行い、較差を埋めるという方式をとっています。

 

次に、ボーナスについては、民間のボーナスの直近1年間(前年8月~当年7月)の支給実績を調査してその「年間支給割合」を求め、これに国家公務員のボーナス(期末手当・勤勉手当といった特別給)の「年間支給月数」を合わせる方式をとっています。

 

ただし、民間企業といっても大企業から中小企業まで星の数ほどあります。そこで、調査対象となる民間企業をどのように選ぶかが問題となります。

 

この点について、人事院は、以下の調査手法を用いています。

 

・調査対象:企業規模50人以上の民間企業

・考慮要素:「役職段階」「勤務地域」「学歴」「年齢階層」に応じた給与水準(ラスパイレス比較)

 

◆調査対象

まず、「企業規模50人以上」の民間企業を対象としています。その理由は以下の通りです。

 

・企業規模50人以上であれば、「部長」「課長」「係長」等の公務員と同等の役職段階があることが多く、同種・同等の者同士の比較が可能である

・企業規模50人以上であれば、民営事業所全体の正社員数の60%超をカバーできる

 

◆考慮要素(ラスパイレス比較)

次に、考慮要素は、「役職段階」「勤務地域」「学歴」「年齢階層」です。それぞれ、以下の段階があります。

 

【役職段階】(10段階)

1級(係員)、2級(主任)、3級(係長)、4級(課長代理・係長)、5級(課長・課長代理)、6級(部長等・課長・課長代理)、7級・8級(部長等・課長)、9級・10級(部長)

 

【勤務地域】(8段階)

地域手当1級~地域手当7級、地域手当非支給地

 

【学歴(年齢階層)】

中卒(「16歳・17歳」から2歳刻み)、高卒(「18歳・19歳」から2歳刻み)、短大卒(「20歳・21歳」から2歳刻み)、大卒(「22歳・23歳」から2歳刻み)

 

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