(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年11月11日、参議院本会議において、国家公務員(一般職)の月給とボーナスを引き上げる法律が可決・成立しました。これは、8月8日の「人事院勧告」を受け入れて行われたもので、給与の引き上げは3年ぶりとなります。本記事では、人事院勧告について、どのようなものなのか、どんな問題点があるのか、解説します。

2022年の人事院勧告・給与改定のポイント

2022年8月の人事院勧告と、それを受けての今回の公務員の給与改定の概要は、以下の通りです。

 

・若年層を中心とした月給の引き上げ

・ボーナス(勤勉手当)の引き上げ(0.1ヵ月分)

 

まず、月給(月例給)については、特に若年層を中心として引き上げが行われました。すなわち、「初任給」と「20代半ば」に重点を置き、30歳代半ばまでの月給の額が引き上げられました。たとえば、初任給は院卒・大卒が3,000円、高卒が4,000円の引き上げとなりました。全体として0.23%引き上げられたことになります。

 

裏返していえば、公務員の給与は民間と比べて0.23%低いと判断されたことになります。

 

次に、ボーナス(期末手当・勤勉手当)については、全職員につき「4.3ヵ月分」だったのが「4.4ヵ月分」へと引き上げられました。なお、新型コロナウイルス禍の前は「4.5ヵ月分」だったので、まだ元の水準を回復できていません。

 

この他に、人事院勧告においては、以下の取組について記載されています。

 

・博士課程修了者等の処遇を改善するため、初任給基準の改正を行う(2023年4月1日から実施予定)

・テレワークにかかわる光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について具体的な枠組を検討

 

人事院勧告の問題点

このように、人事院勧告は、民間との格差を埋めるという観点から行われてきているものですが、問題点があります。

 

・終身雇用制度・年功序列を前提としている

・非正規雇用の職員への目配りが不足している

 

すなわち、ラスパイレス比較において用いられている「役職段階」「勤務地域」「学歴」「年齢階層」といった指標は、正社員として終身雇用されるという、旧来のモデルケースを前提としており、今日の多様な働き方(あるいは「働かされ方」)にマッチしているとはいえません。

 

たとえば、深刻化している非正規公務員のワーキングプア、やりがい搾取、身分の不安定といった問題については、有効性が乏しいといわざるをえません。

 

また、人事院勧告の「職員の給与に関する報告」においても、人事院自身が以下の課題への取組が必要であることを認めています。

 

・初任給や若年層職員の給与水準を始めとして、人材確保や公務組織の活力向上の観点を踏まえた公務全体のあるべき給与水準

・中途採用者を始めとする多様な人材の専門性等に応じた給与の設定

・65歳までの定年引上げを見据えた、60歳前の各職員層及び60歳を超える職員の給与水準(給与カーブ)

・初任層、中堅層、ベテラン・管理職層などキャリアの各段階における職員の能力・実績や職責の給与への的確な反映

・ 定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた給与

・ 2024年に見直すこととされている地域手当を始め、基本給を補完する諸手当に関する社会や公務の変化に応じた見直し

 

昨今、様々な局面で、国家公務員の人材不足・行政サービスの質の低下が露呈しているという指摘がなされています。もはや、旧来の「民間との格差を埋める」という受け身的・消極的な姿勢だけでは、人材確保という面で限界があるのは明らかであり、それにとどまらない新たな枠組みが要求されているといえます。

 

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