(※写真はイメージです/PIXTA)

総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)は、糖尿病の食事療法について、「糖質制限よりも『適正糖質』が重要」であるといいます。なぜならば、行き過ぎた糖質制限はかえって血糖値の急上昇を招くことがあるなど、様々な弊害があるからです。とはいえ、血糖値への影響が心配な食品も少なくないでしょう。本稿にて、「ちょっと迷う食品」の判断方法を解説します。※本稿で述べる「wtGL値」「CI値」「RGI値」は筆者の造語です。

食後血糖値に直接影響するのは、あくまで「ブドウ糖」

本稿は、あくまでも糖尿病を意識している方へのアドバイスです。基本的な考えとして、食品中の糖質の中から、血糖値に直接影響する「ブドウ糖」の換算量(wtGL)を求めるようにしています。当然、ブドウ糖換算量(wtGL)のほうが糖質量よりも低値です(※注:ブドウ糖換算量5g以下は血糖値に影響しないと考えていいでしょう)。糖尿病の方はもちろんですが、境界型糖尿病の方の1食分のブドウ糖換算量は50g以下からスタートしてください。

 

ただし、食品単品で述べている場合と、料理全体としてブドウ糖換算量を述べている場合がありますので、混乱しないようご注意ください。

 

ブドウ糖換算量とは、目的の食品の持つ血糖値に与える影響をブドウ糖に換算して表現した指標です。説明が複雑化するため、ざっくりと「食品中のブドウ糖量」だと理解して構いません。

 

本稿では、豆類、調味料、野菜(芋類を除く)、練り物を取り上げてみます。穀物や芋類及び果物などについては別の機会に説明します。

RGIとは?

別稿で説明していますが、ここでもう一度おさらいしておきましょう。実際に食べる食品の重さ(g)を知ることで簡単にその食品のwtGL(ブドウ糖換算量)を算出するために必要な概念です。

 

【計算式】RGI=CI×GI

※CIとは食品中の炭水化物はまたは糖質の含有比率のこと。

※GIとは食品中に含まれる炭水化物または糖質中のブドウ糖換算比率のこと。

 

wtGLは「実際に食する食品(g)×RGI」で求められます。

 

豆類や種実および野菜に関しては、常識的に食べられる量においては血糖値にほとんど影響しないものが多いため、本稿ではwtGLを計算する意味のあるものに限り計算しています。

「ちょっと迷う食品」のブドウ糖換算量を計算

以下の各食品のRGIに摂取量をかけると、その食品のブドウ糖換算量を算出できます。

 

■豆類のRGI値(図表1)

前述の通り、大豆などほとんどの豆類は常識的に食べられる量においては血糖値にほとんど影響しないため、計算していません。

 

[図表1]豆類のRGI値

 

■種実のRGI値(図表2)

種実で栗以外は計算する必要はありません。

 

[図表2]種実のRGI値

 

栗は100gでwtGL(ブドウ糖換算量)は35gにもなります。栗ご飯、マロングラッセ、栗きんとんなど要注意です。
 

■野菜のRGI値(図表3)

ほとんどの野菜についても計算する必要はありません。ただし、芋類はここでは論じていません。芋類は、ブドウ糖(=糖質のうち、血糖値に直接影響するもの)をデンプンという形で蓄えており、そもそも糖尿病の人には向かない食材だからです。

 

[図表3]野菜のRGI値

 

文中でwtGL=ブドウ換算量ですが、統一した表現になっていないことをお許しください。

 

■練り物(図表4)

ここではRGIでは表現していません。『80キロカロリーガイドブック』(女子栄養大学出版部)を参考に、それぞれの80kcalの重さと炭水化物含有量からwtGLを計算しています。練り物のGl値の報告はさまざまですが、ざっくりと50%で計算して大きな間違いはないと考えています。

 

[図表4]練り物のwtGL

 

■調味料(図表5)

調味料の炭水化物含有量は意外と多いとされています。しかし、結論として、通常の摂取量や調味料が作られる原材料から推定されるGI値を考え合わせると、ほとんどの調味料は血糖値に影響することはありません。唯一の例外はカレールウです。小麦粉を含むため、常識の範囲内で摂取するように心がけましょう。同じくハヤシルウも、食べる量によっては注意が必要です。

 

i)豚カツソースの場合

通常摂取する量に含まれる糖質は5〜6g程度です。しかし、ソースの原材料から考えられるGI値を考慮してブドウ糖換算量を計算すると、wtGL 1.5〜1.8gと概算されます。よって、たっぷりかけても問題ありません。

 

ii)焼き肉のタレの場合

大さじ1杯15ccとすると、糖質は31.9×15÷100=4.785g。多く見ても5gくらいであり、タレ単品としても血糖値に影響しないと考えます。さらに言えば、タレだけ食べる人はなく、誰しも肉や魚と一緒に摂りますので、結果的にタレが血糖値に及ぼす影響はより減っていきます。炭水化物の食品を単独で摂るよりも、タンパク質や脂質を同時に摂取したほうが、カロリーが増えても血糖値は下がるからです。よって、ここで注意すべきはご飯の量だけです。

 

iii)お好み焼きソースについて

図表5の数字から大さじ1杯の糖質を計算すると、32.8×15÷100=4.92g。材料からソースのGIを想定するとブドウ糖量は半分以下となり、血糖値に影響しません。

 

お好み焼き自体の糖質は、小麦粉や山芋などの材料を考えると1人前で50gくらいとの報告があります。しかし糖質50gとしても、キャベツがたくさん入り、マヨネーズをたっぷりかけて、かつお好み焼きソースを多めにかけても、小麦粉や山芋のGIから計算されるwtGLは恐らく40を切ると想定します。これだけなら糖尿病があってもまず大丈夫です。しかし、焼きそばまで食べるとしたら糖尿病の人はアウトです。

 

ご参考までに、『日本食品成分表2022 八訂』(医歯薬出版)からいくつかを抜粋します。

 

a)糖質は「炭水化物−食物繊維」で計算し直してあります。摂取量を100gとして計算していることを忘れないでください。

 

b)図表5に書いてあるのは糖質であり、ここから原材料の特徴を考えてそれぞれのGI値からwtGL(ブドウ糖換算量)を計算します。なかなかGI値がわかりにくいものもあります。

 

1)材料自体にブドウ糖含有量が少ないもの。

●味噌…大豆米麹が主原料なので、もともとブドウ糖含有量は少ない。

●醤油…大豆、小麦などから作られている。

●ウスターソース…トマト、玉ねぎ・にんじん、生姜などから作られている。

●豆板醤…空豆、唐辛子などから作られている。

 

2)胡椒や山椒、わさび、辛子などは摂取量100gでみた数字は高いですが、実際はほんの少ししか使いません。

 

3)本みりんやみりん風調味料は、糖質量と判定されていてもアルコールへ分解している分も多いことから、ブドウ糖換算量は無視して構いません。

 

図表5に各調味料の100gあたりの糖質量を列挙します。

 

図表5では100gとして計算していますが、現実的には、どの調味料も100gなど大量に使うことはありません。かつ、ここでは細かくは書きませんが、それらのGI値まで考えると、上述したごとく現実に問題となる調味料はカレールウかハヤシルウに限られます。

 

[図表5]各調味料の100gあたりの糖質量

 

当たり前のことですが、あくまでも調味料は単独で摂るものではなく、何にかけるかによって大いに違いが現れることを肝に銘じましょう。コロッケとソースの組み合わせよりも、メンチカツとソース、またはハンバーグだけ、というアレンジも一考です。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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