役員賠償責任保険とは
役員賠償責任保険は、会社の内外から役員としての責任を問われ、個人として損害賠償責任を負った場合に、賠償金等の費用をカバーするものです。
会社の役員は、日々、難しい経営判断を迫られています。悪いことをするつもりがなかったとしても、過失によって、会社の内外問わず、誰かに損害を与えてしまうことがありえます。民法、会社法の規定に基づき、さまざまな賠償責任を負うリスクがあります。
役員が追及される可能性がある賠償責任の類型は、大きく分けて、以下の2つです。
1. 取引先・顧客、従業員等の「第三者」に対する責任(対第三者責任)
2. 会社に対する責任
内容については後述するとして、役員賠償責任保険は、これらの賠償責任を負った場合に、賠償金だけでなく、訴訟費用、弁護士費用等もカバーしてくれます。また、会社の初期対応の費用や内部調査の費用が対象となることもあります。
会社が役員らにかける形で契約します。保険料は、株主総会決議(取締役会設置会社では取締役会の決議)等の要件をみたせば、全額が会社の経費(損金)に算入されます。
役員が負う可能性がある2種類の法的責任
次に、役員が追及される可能性がある以下の2種類の法的責任の種類について、それぞれ、どういう場面がありうるのかも含めて解説します。
1. 取引先・顧客、従業員等の「第三者」に対する責任(対第三者責任)
2. 会社に対する責任
◆1. 取引先・顧客、従業員等の「第三者」に対する責任(対第三者責任)
第一に、「対第三者責任」です。これは、民法上の「不法行為責任」(民法709条)、または会社法上の「対第三者責任」(会社法429条)として責任追及されるケースです。
「第三者」は、取引先・顧客以外に、自社の従業員も含まれます。自社の株主や従業員が「第三者」というのは違和感があるかもしれません。しかし、会社は独立した法人格を有しているので、会社からみれば、株主や従業員は別人格をもつ「第三者」ということになります。
典型的なのが、取引先・顧客からの責任追及です。たとえば、以下のようなケースです。
・会社が倒産し、顧客の売掛債権が回収不能になったとして訴えられた
・製造・販売した商品が欠陥商品であり、それによって損害を被った顧客から管理責任を問われ訴えられた
・業務提携をしていた会社と提携解消したところ、それまでに出資したコストが無駄になったとして訴えられた
次に、従業員からの責任追及として考えられるのは、違法解雇、不当労働行為、セクハラ・パワハラ、職場内のいじめ、労働災害を原因として、会社と取締役個人の両方を訴えてくるケースです。