マンションの価値は「管理」が9割
マンションは、建った直後はまだ完成形ではありません。仮完成の状態です。造るのは人間ですから、その大規模な工事の過程で必ず大小のヒューマンエラーが発生しているものです。ですから、使っていくうちに不具合を見つけていき、直していくことで初めて完成形へと至ることができます。
すなわち、居住して以降の行き届いた管理というものがマンションの将来にわたる価値と安全性を決定づけていくことになります。
本件では、マンションの管理組合がしっかりしていたことが重要な鍵を握っていました。不具合発覚の事実にめげることなく、粘り通して販売会社や施工会社に補償させる成果を勝ち得ることができたのは、管理組合の力が大きかったことは間違いありません。
積み立ててきた修繕積立金を無駄にしなかったため、資金は組合予算にプールされたまま、次へ繰り越せるわけです。修繕費積立金が突然引き上がるといったリスクも払拭されるわけで、これも今回は売り込み材料の一つとなりました。
管理組合がしっかりしているかどうかという要素も、マンションの価値を決めるうえでは重要な材料になるということです。むしろマンションの価値は9割方、管理で決まるといっても過言ではありません。
不具合発覚にも毅然とした態度で応対し、第三者の検査実施も認めた、管理組合のファインプレーがあったからこその、理想以上の価格での売却でした。
突破口は常識破りの提案力
住宅診断を通して不動産の真の価値を可視化、ネガティブだった側面をポジティブ化して販売した売却ストーリーは、いわば宅建士と建築士の連携によって、本当の価値を産出してから不動産を流通させるという、前代未聞の方法での売却プロセスでした。
Bら不動産エージェントにとっても、そして不動産業界においても、大げさでなく意義のある売却手法であったといえます。
インスペクションのプロやマンション管理士をもつ人間のアドバイスがあったからこそ、マイナス視されていた建物にプラスの価値をもたらすことができました。専門性なくして、枠にとらわれない常識破りのアイデアは生まれてはきません。そして、そのアイデアなくして、前例のない最高の不動産取引を成し遂げることなどできないのです。
不動産エージェントが大切にしている、売主の思いを汲み取る姿勢が、アイデア創出のきっかけとなりました。「この不動産は本当にいいものだから、価値を分かってくれる方に買ってほしい」という思いを売主と共有できたからこそ、不動産エージェントはその見えない価値を掘り起こそうと懸命にアイデアを練り込みました。不動産エージェントにとって、売主の不動産に込めた思いは、常識の壁を打ち破る強い原動力となるのです。
大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長