国の施策も不動産価格に影響を及ぼす
日経平均株価と不動産価格は大きな流れで見れば相関関係があるとは言ったものの、細かく局地ごとに見ると必ずしもそうとはなっておらず、その大きな要因の一つとなっているのが政策金利をはじめとした国の施策なのです。
具体例として2008年リーマンショックと2020年コロナショックを比較してみます。どちらのショックも日経平均株価を大きく下げた点では似ていますが、不動産価格には明らかな違いが生じています。リーマンショックは金融危機を誘発し、不動産も投げ売りが起きて大暴落となりました。
ところがコロナショックでは甚大な金融危機は起こらず、不動産価格の暴落を招くことはありませんでした。その明確な理由は、国の方針として無制限の金融緩和政策が貫かれたからです。加えて、諸外国と比較してコロナによる行動制限が厳格化されず、緊急事態宣言が短期間で終わったことも大きかったといえます。緊急事態宣言の最中、不動産取引市場は時を刻むのを止めたかのように取引回数が激減しましたが、宣言明け以降は需要が噴き出すようにして盛んに取引が行われました。以降から成約平米単価は一貫して上がり続けています。
そして直近の特徴としては、不動産価格があまりに高まっているので、そろそろピークか、と判断したであろう不動産所有者が比較的強気な価格で市場に売り出し、不動産の在庫数は増える傾向にあります。このような不動産所有者の思惑に対して、買い手は値上がる一方の中心地不動産に白旗を上げ、比較的郊外に不動産を求めるようになっています。
この傾向を後押しするもうひとつの背景として、コロナで加速化したリモートワークの影響も手伝っていると見られ、駅から若干遠くてもいいから広めの家に住みたい、という需要が高まっている点が実際の取引状況からうかがえます。
コロナショックだけを切り取ってみれば、必ずしも日経平均株価と不動産価格は近しい動きをしておらず、その背景には国の施策による部分が大きかったということです。しかし中長期目線では、コロナの影響が沈静化しつつある2022年、日経平均株価は上昇傾向にあり、不動産価格も追随する形で値上がりしています。
活性化一途の住宅市場を根底で支えているのは低金利、すなわち国のスタンスです。しかし現在の異次元ともいえる金融緩和政策がいつまでも続くとは考えにくいです。政策金利は近からず上がることが予測されます。そのタイミングは、現日銀総裁の任期が満了となる2023年4月8日以降と考えるのが妥当です。