過去の「売り時」はいつだったか?
以上のような法則を踏まえながら実際の不動産市況の潮目を見返すと、1990年初頭のバブル絶頂期は日経平均株価がピークを迎え、不動産価格も未曾有の高値を記録していました。そのような市況で東京都に家を買える人はほぼおらず、神奈川や埼玉や千葉、そして栃木や茨城にまでマイホームを求める世帯が殺到する時代でした。
不動産を売るベストタイミングもいわばこのときが絶頂であり、売りが殺到したからこその大暴落、不動産価格の大幅な値崩れを許してしまったのです。バブル崩壊以降は日経平均株価が大暴落し、つられて不動産価格も下落基調となります。以降、都心部の不動産は比較的手に入れやすくなり、「より都心に、より駅近の物件を買おう」という意識が強まっていきました。それが30年以上経った今もずっと続いているというのが、大局で見る不動産市況です。
2021年9月末には日経平均株価が1989年バブル期以来の3万円台に到達しました。バブルの再来だ、どこかで一気に下落する局面が来る、という声もちらほら耳にしましたが、不動産市場の観点からバブル期と昨年9月末時点の日経平均3万円台では明らかに様子が異なることが分かります。バブル当時、日本の土地総額は2,000兆円でした。しかし2022年現在はおよそ半額の1,000兆円となっています。バブル期のように日本全体の不動産が異常な高値で推移しているわけではないのです。
では現代の不動産市況では何が起きているのかというと、完全に三極化しています。「価格維持あるいは上昇を続ける地域」と、「なだらかな下落を続ける地域」、そして「限りなく無価値に近い地域」、大きくこの3つに不動産を区分することができます。このような三極化の様相をより顕著にしながら、引き続き日経平均株価に連動するようにして不動産価格は推移していくことが予想されます。
他方、バブル期とは違って現代は超低金利時代です。住宅ローン金利の話をすればバブル期の変動金利は7~8%台、対して2022年12月時点では変動金利が0.3~0.5%、固定金利では1%前半です。
35年住宅ローン変動金利で1億円を借りた場合、今は月30万円ほどの返済で済むところ、バブル期だと月60万円を超えていました。住まいを購入する多くの人は住宅ローンを組みます。購入のしやすさでいえば、低金利の現代は圧倒的に家を買いやすい時代です。そして住宅ローン金利を決定づけるのは国(あるいは日銀)の施策である政策金利ですから、国が政策金利をいくらに設定するかで家の買いやすさが決まり、不動産取引を行うタイミングも決まってくることになります。