(※写真はイメージです/PIXTA)

外資系企業に勤めている方でも、残業代を請求することは可能です。籾山善臣弁護士(リバティ・ベル法律事務所 代表弁護士)が、外資系企業でも残業代をもらえる理由、外資系企業が残業代を支払わない手口、日ごろから外資系企業で働く方に集めておいていただきたい証拠について解説します。

残業代を請求するには?集めるべき「8つの証拠」

外資系企業に対して、残業代を請求することを検討している場合には、日頃からしっかりと証拠を集めておくことをおすすめします。

 

外資系企業によっては、タイムカードなどで労働時間を管理していないことがありますので、自分の身を守るためには積極的に対策を講じていきましょう。

 

具体的には、外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠としては、以下の8つがあります。

 

証拠1:雇用契約書又は労働条件通知書

証拠2:就業規則及び給与規程

証拠3:給与明細

証拠4:勤怠管理システムのスクリーンショット

証拠5:労働時間メモ

証拠6:PCログ

証拠7:LINEやSNSによる帰宅報告

証拠8:リモートワーク時の業務報告メール

 

それでは順番に説明していきます。

 

■証拠1:雇用契約書又は労働条件通知書

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の1つ目は、雇用契約書又は労働条件通知書です。

 

日本企業では労働基準法に反して雇用契約書や労働条件通知書は交付されていないという企業もあります。

 

これに対して、外資系企業では、ほとんどのケースでは雇用契約書又は労働条件通知書がありますので、しっかりと保管しておきましょう。

 

雇用契約書を見ることで、1日の所定労働時間や休日、割増率、賃金額やその内訳、固定残業代の有無など、残業代を計算するうえで基本的な情報を知ることができます。

 

■証拠2:就業規則及び給与規程

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の2つ目は、就業規則及び給与規定です。

 

就業規則や給与規程については、その会社における労働条件の最低基準として機能します。

 

雇用契約書よりも、有利な労働条件が就業規則や給与規程に記載されている場合には、その規定に従い、有利に計算した残業代を請求できるのです。

 

例えば、給与規程上支払わなければいけない手当が支払われていなかったなどということがよくあります。

 

■証拠3:給与明細

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の3つ目は、給与明細です。

 

給与明細を見ることで、毎月の賃金額やその内訳、残業代の支払いの有無、これまでの賃金の増加や減少がわかります。

 

外資系企業では、紙の給与明細ではなく、電子データにより給与明細を交付していることがあります。

 

このような場合には、退職した後に給与明細を確認することが難しくなることがありますので、事前にファイルを保存しておくか、スクリーンショットを撮っておきましょう。

 

入社時から全ての給与明細を確保していただけると安心ですが、それが難しい場合には現在から遡って2年分の給与明細を確保しましょう。

 

■証拠4:勤怠管理システムのスクリーンショット

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の4つ目は、勤怠管理システムのスクリーンショットです。

 

近年では、タイムカードではなく、勤怠管理システムにより労働時間を管理しているという会社が増えてきています。

 

外資系企業では、特にその傾向が強いように感じます。

 

勤怠管理システム上の、労働時間については、残業代を請求するうえでとても重要な証拠となります。

 

現在から遡って2年分の記録をスクリーンショットするなどして保管しておきましょう。

 

毎月の労働時間の合計だけではなく、毎日の始業時刻や終業時刻がわかるように確保することが重要です。

 

■証拠5:労働時間メモ

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の5つ目は、労働時間メモです。

 

勤怠管理システムなどで労働時間が管理されていない場合には、自分で労働時間をメモしておきましょう。始業時刻と終業時刻、休憩時間を1分単位で記入しておくことがポイントです。

 

Wordなど後から修正できるものではなく、手書きで大学ノートなどにとっておいた方がいいでしょう(図表5)。

 

[図表3]労働時間メモの例

 

■証拠6:PCログ

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の6つ目は、PCログです。

 

勤怠管理システムが導入されていない会社などでは、労働時間メモの他にも、客観的な証拠としてPCログを確保したいところです。これにより労働時間メモの信用性を担保することができます。

 

PCログについても現在から遡って2年分は確保したいので数ヵ月毎に取得するようにするといいでしょう。PCログについては、図表4の手順で確認してください。

 

[図表4]PCログの確認手順

 

■証拠7:LINEやSNSによる帰宅報告

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の7つ目は、LINEやSNSによる帰宅報告です。

 

例えば、LINEで「今から帰る」と報告しているケースやSNS「仕事終わり」などと投稿している場合には、証拠となります。

 

毎日このような投稿をしていることは少ないでしょうが、複数回このような投稿をしているとおおよその労働時間を推認することができます。

 

LINE履歴が長期間に場合には、スクリーンショットをすることが大変な場合もありますので、テキストデータにして保存しておく方法が有用です。

 

LINEのやり取りをテキストデータにして保存する方法は図表5のとおりです。

 

[図表5]長期間のLINEのやり取りをテキストデータにする方法

 

■証拠8:リモートワーク時の業務報告メール

外資系企業で働く人に集めて欲しい残業代の証拠の8つ目は、リモートワーク時の業務報告メールです。

 

リモートワークの場合には、会社側から、「残業していることを知らなかった」「残業を指示した覚えはない」などの反論がされることがあります。

 

このような反論を封じるためには、リモートワーク時の業務報告メールが有用です。

 

業務報告メールにより時間外に業務の報告が行われているような場合には、少なくともその時間に労働を行っていたことを会社が認識していたといえるためです。

次ページ残業代請求における最大のリスク、退職勧奨への対処法

※本連載は、リバティ・ベル法律事務所が運営する法律情報サイト『リーガレット(https://legalet.net/)』のコラムを転載したものです。

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