(※写真はイメージです/PIXTA)

意外なことに、外資系企業では、日系企業よりもパワハラに悩む人の割合が多いようです。外資系企業と日系企業ではどんな違いがあるのか、また、外資系企業でよくあるパワハラの手口を見ていきましょう。籾山善臣弁護士(リバティ・ベル法律事務所 代表弁護士)が解説します。

「外資系企業でのパワハラ」は日系企業の3倍以上!?

外資系企業では、日本企業にはびこる精神論や根性論とは異なり、成果主義であり合理性が重視されるため、パワハラも少ないのではないかと考えている方もいますよね。

 

実は、外資系企業では、日系企業よりも、パワハラに悩んでいる方の割合が3倍以上も多いのです。

 

例えば、ピースマインド株式会社の調査によると、日系企業ではハラスメント問題の相談の割合は4%程度にとどまっておりますが、外資系企業では13%となっております。

 

出典:ピースマインド株式会社『【調査分析】日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査 ~「ハラスメント」相談は、日系に比べて3倍以上も~』
[図表1]外資系企業と日系企業の「職場」に関する相談内容と割合 出典:ピースマインド株式会社『【調査分析】日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査 ~「ハラスメント」相談は、日系に比べて3倍以上も~』

外資系企業のパワハラ、日系企業のパワハラの違い

ただし、外資系企業で行われるパワハラについては、日本企業とは異なる特徴があります。外資系において、パワハラが行われる原因の多くは、労働者を自己退職に追い込むためです。

 

日系企業では、終身雇用制度のもと会社も労働者を育成しようとしますので、いわゆる愛の鞭として、厳しく接していることもあります。

 

これに対して、外資系企業では、会社に貢献できない者は切り捨てられることが多く、会社としても即戦力を求めており、労働者を育成するという考え方が希薄です。

 

しかし、日本においては、外資系企業といえども、労働者を簡単にクビにすることは許されておらず、一方的に解雇を言い渡すと法的な紛争になるリスクがあります。

 

そこで、外資系企業は、労働者を退職させるために解雇を言い渡すのではなく、自己退職に追い込む、つまり、労働者に自ら退職届を書かせようとします。

 

そのため、外資系企業におけるパワハラは、根性論や精神論などにより労働者に負担をかけるという方向のものではなく、自信の喪失や職場環境からの孤立を助長し労働者に負担をかけるという方向のものとなりがちです。

 

[図表2]日系企業のパワハラ、外資系企業のパワハラ

外資系でよくある5つのパワハラ

それでは実際に外資系でよくあるパワハラを紹介していきます。外資系でよくあるパワハラとしては、以下の5つがあります。

 

パワハラ1:理不尽な評価を繰り返される

パワハラ2:ミーティングで辛辣な発言をされる

パワハラ3:PIPで過大な目標を課される

パワハラ4:退職勧奨を繰り返される

パワハラ5:自宅待機を命じられる

 

各類型について順番に説明していきます。

 

■パワハラ1:理不尽な評価を繰り返される

外資系でよくあるパワハラの1つ目は、理不尽な評価を繰り返されることです。

 

外資系企業では、定期的にABCDなどの評価をされることがあります。しかし、その評価方法が必ずしも公正とはいえないことがあり、他のチームメンバーの成果や他のチームの成果が評価に大きくかかわるようなこともあります。また、どう改善すれば成果を出せるのかが不明なこともあります。

 

このように外資系企業では、自分の力ではどうにもならない事項を原因として、理不尽な評価を繰り返されることがあるのです。

 

■パワハラ2:ミーティングで辛辣な発言をされる

外資系でよくあるパワハラの2つ目は、ミーティングで辛辣な発言をされることです。

 

外資系企業では、定期的に上司と1対1のミーティングが行われ、業務の進行状況や達成目標の共有などが行われることがよくあります。

 

しかし、会社との関係が悪くなってくると、ミーティングでのフィードバックで辛辣なことを言われるようになります。例えば、「本当にやる気があるのか?」、「全然仕事ができていないじゃないか」などの発言をされるようなケースです。

 

■パワハラ3:PIPで過大な目標を課される

外資系でよくあるパワハラの3つ目は、PIPで過大な目標を課されることです。

 

外資系企業は、退職させようとしている労働者に対して、退職勧奨や解雇の前にPIPという業務改善プログラムを行うことがよくあります。これを達成することができないと、業務改善の機会を与えたがこれを達成することができなかったとして、不利な証拠として使われるのです。

 

PIPは適正な目標が設定されていれば労働者にとっても有用な制度ですが、過大な目標を課されることが非常に多くなっています。

 

■パワハラ4:退職勧奨を繰り返される

外資系でよくあるパワハラの4つ目は、退職勧奨を繰り返されることです。会社から1週間に一度くらい面談に呼ばれ、退職を勧められたり、再就職の状況を尋ねられたりするようになります。口調などは穏やかな形で行われることが多いですが、本社や人事部の複数の方から圧迫面接のようかたちで長時間説得をされることがあり、労働者側も疲弊していってしまいます。

 

■パワハラ5:自宅待機を命じられる

外資系でよくあるパワハラの5つ目は、自宅待機を命じられることです。労働者が退職に応じないでいると、自宅待機を命じられて、職場環境から孤立させられて、復帰しにくい心理状態にされることがあります。更に、会社によっては、自宅待機期間中については賃金の60%しか支払わないなどの対応をして、生活にも支障が生じることがあります。

 

行き過ぎた退職強要行為は、法律上も違法になります。外資系企業でパワハラを受けた場合、どうすればよいのでしょうか?  外資系企業で行われるパワハラについては、日本企業とは異なる特徴がありますので、対応や相談先も異なってくる点に注意が必要です。次回は外資系企業におけるパワハラの対処法や慰謝料の相場などについて解説します。

 

籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所 代表弁護士

 

※本連載は、リバティ・ベル法律事務所が運営する法律情報サイト『リーガレット(https://legalet.net/)』のコラムを転載したものです。

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