(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年も残すところ2ヵ月を切りました。相続税対策として、年110万円の贈与税の基礎控除(暦年贈与)の活用を考えている方もいらっしゃることと思います。しかし、振込先の口座については注意が必要です。本記事では、暦年贈与を行ううえでの注意点についてお伝えします。

暦年贈与とは

贈与を行う場合、贈与を受けた人(受贈者)が贈与税の課税対象となり、原則として、贈与を受けた年ごとに納税申告をする必要があります(暦年課税)。そして、その場合、年110万円の基礎控除の枠があります。

 

この基礎控除の枠を利用して行われる贈与を「暦年贈与」といいます。

 

暦年贈与は、受贈者ごとに計算されます。したがって、受贈者は、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除を受けられるのは総額110万円までです。これに対し、贈与を行う人(贈与者)は1年あたり、110万円を何人にでも贈与できます。

 

したがって、暦年贈与は、贈与者にとって、生前に複数年にわたって無税で財産を移転でき、相続税対策になります。

 

ただし、贈与者が亡くなる前の3年間の贈与は、その額が相続財産に加算されるため、相続対策にはなりません。また、この後に述べるように、近い将来、暦年贈与の相続財産への加算が行われる期間が延長される可能性も考えられます。

 

このことからすれば、暦年贈与による相続対策は、できるだけ早期から始めておくことをおすすめします。

暦年贈与が廃止される可能性?

なお、昨今、暦年贈与の制度が廃止されるということが噂されています。このことはどのように考えるべきでしょうか。

 

発端は、与党(自民党・公明党)の「令和3年(2021年)度税制改正大綱」に「相続税と贈与税の一体化」の提言が記載されたことです。

 

提言の問題意識は、おおむね以下の通りです。

 

・高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏っている

・現行の生前贈与の非課税措置(暦年贈与等)は富裕層が相続税対策として利用しやすい

・富裕層以外の人は相続税対策が不要なので生前贈与に消極的

・諸外国の制度を参考に、相続税と贈与税を一体的にとらえて課税する方向性にシフトすることが望ましい

 

すなわち、「相続税と贈与税の一体化」の議論の目的は、富裕層とそれ以外の人との「格差の固定化」を防ぎ、資産の若年世代への移転を促進するということにあります。

 

そうであるとすれば、見直すべきなのは暦年贈与に限ったことではなく、相続税・贈与税の体系を抜本的に変える必要があります。また、与党にとって富裕層は大きな支持基盤の一つであり、これまでの傾向からも、敢えて富裕層の利益に反することを真っ先に実施することは考えにくいといえます。

 

したがって、現時点では、暦年贈与の廃止については考慮に入れず、淡々と暦年贈与を行うというスタンスでよいと考えられます。

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