4つの具体例で解説!パワハラと指導の境界線
部下の仕事上のミスを、上司が指導する場面を考えてみよう。
【発言の内容に着目した場合】
①脅迫行為や、身体・名誉・地位・財産に危害を加える言動、単純な悪口
→その発言の目的のいかんを問わず、パワハラと評価される。
例)殺すぞ。死ね。給料ドロボー。殴られたいのか。クビにするぞ。仕事やめちまえ。バカ・ハゲ・デブ・ブサイク、など
②部下の属性や存在を否定する言動
→仕事と無関係、または関連性の乏しい目的で言えばパワハラと評価される。仮に業務に関連してなされたとしても、継続的になされた場合や発言状況によってはパワハラに該当する可能性が高い。
例)頭が悪い。見た目が暗い。使えない・仕事ができない。お前は会社にとって損失。など
③部下が行った業務自体を否定する言動
→直ちに違法なパワハラというわけではない。ただし、机の前に立たせて長時間叱責を続けるなど、発言の方法や態様によってはパワハラになりうる。
例)こんな資料じゃ使えない。さっきのプレゼンは最低だった。報告書が酷すぎる。など
④部下が行った業務の改善点を指摘する言動
→通常はパワハラとは評価されない。
例)この資料には根拠となるデータが足りない。あのプレゼンは●の部分の準備が足りていないのではないか。報告書は期限内に提出してくれないと困る。など
とはいえ、どのような言動がパワハラとなりうるかは、ほんの数年単位でも変化する。そのため、どのような言動を禁止すべきかということよりも、どのようなコミュニケーションを目指すべきかという観点から考えた方が、より生産的であろう。
過去数十年にわたって世界中で愛読されているデール・カーネギーの古典的名著『人を動かす』の一節を紹介する。これは、何十年経っても変わらない人間の本質だと思う。
「人を動かす秘訣は、この世に、ただ一つしかない。この事実に気づいている人は、はなはだ少ないように思われる。しかし、人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起こさせることーこれが秘訣だ。
重ねて言うが、これ以外に秘訣はない。
もちろん、相手の胸にピストルをつきつけて、腕時計を差し出したくなる気持ちを起こさせることはできる。従業員に首を切るとおどして、協力させることもできるー少なくとも、監視の目を向けている間だけは。鞭やおどし言葉で子供を好きなように動かすこともできる。しかし、こういうお粗末な方法には、常に好ましくないはね返りがつきものだ。
人を動かすには、相手のほしがっているものを与えるのが、唯一の方法である。
人は、何をほしがっているか?」
(デール・カーネギー『人を動かす 新装版』(創元社・1999年)より引用)