(※写真はイメージです/PIXTA)

莫大な資産を保有する日本の富裕層は、近年大きく変わった……海外移住のサポートを行い、これまで2万人を超える富裕層をみてきた大森健史氏は、そう実感しているといいます。いまどきの“シン富裕層”の実態とは? 今回は、インターネットを駆使して富裕層となって人たちを中心にみていきます。

結婚、食へのこだわりもなし…「究極に無欲」な生き方

その男性は、新宿ナンバーワンホステスの女性と結婚していましたが、私の感覚からすると不思議な関係でした。

 

ドバイに2、3年移住するというので、「では奥様もご一緒ですか?」とたずねると「いや、彼女は海外が好きではないみたいだから、行かないと思うんですよね」と言います。

 

夫は移住したいから行くし、妻は行きたくないから行かない。別々に暮らすことに、何のこだわりもしがらみもなさそうでした。世代的な違いもあるのでしょうか。それぞれが自分の気持ちに率直という印象を受けました。

 

彼の場合は働かなくていい資産を得て、毎日投資以外やることもなくヒマで、なんとなくクラブやキャバクラに行くようになり、たまたまその中の1人と仲良くなって結婚したとのことでした。

 

大富豪といわれる実業家が、動画配信などに登場し話しているのを見ていると、話し方や雰囲気など、すべての力が抜けている印象を受けます。表情も変につくらないし、誰に気も遣う必要もなさそうなふるまいです。暗号資産でシン富裕層になった人たちも、そういう力の抜けた雰囲気で、思うままに生きている印象です。

 

筆者みたいな凡人は、自分の買った株がどうなるのか、上げ下げするたびに一喜一憂してしまいます。そして焦って、高いときに買ってしまったり、安いときに売ってしまったりするのです。トレーダーは欲がないからこそ成功しています。

 

ただその方は無欲すぎて、高額なスポーツカーや時計だけでなく、おいしいものを食べたい、などの食に関する欲もなく、「世の中に投資がなかったら、生きる意味自体何も感じられないんじゃないか」と心配になるほどです。人間的な熱さや力強さなどはなく、ビジネスオーナーの対極のタイプで、ある意味「究極のシン世捨人」という感じです。

 

ビザ申請についても申請費用が多少かかったら「高いね」とは言いますが、淡々としています。

 

そんな彼から、新たにオーストラリアの投資永住権を申請したいという依頼があったときには、不思議に感じました。

 

本人も「海外にはあまり行きたくないんです。オーストラリアに行ったこともないです。でもとりあえず永住権を取っておきたいなと思ったので、手続きをお願いします」と言われます。理由を聞くと、「北朝鮮がミサイルを打ってくるなど、何かあったときに、日本から逃げられるようにしておく」とのことでした。

 

驚くかもしれませんが、こうした「有事に備えたいから」という理由で永住権の問い合わせをしてくる人は、実は多いのです。

 

日本の地震の多さを心配する人もいますし、「日本は将来、国家破産する。そんな衰退する国で子育てをするのは、子どもが可哀想だ」と言う人も少なくありません。考え方は多種多様で私自身も色々なお話をうかがえるので日々勉強をさせてもらってます。

 

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※本連載は大森健史氏の著書『日本のシン富裕層』(朝日新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本のシン富裕層 なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか

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