「10分でエッセン(食事)してきて」
私たち耳鼻咽喉科は外科系マイナーの科で、手術は12時間くらいの長いものがあります。助手は、執刀医の先生の指示で順番に食事をします。
「10分でエッセン(食事)してきて」とよく言われました。当然早食いになってしまいましたし、味覚も音痴になりました。今でも気をつけないと私の食事は数分で終わるエサとなり、気持ちのリフレッシュにもならないですし、生活習慣病にもつながりかねません。
何よりデートで食事をしていても、常に先に終わってしまうのもカッコ悪いので、とても気を使ってしまい、食事自体に疲れるのも、私がもてない理由の一つと思っています。
味が感じづらい、口の中に何もないのに苦みを感じる…
さて、新型コロナ感染症の一つの症状として、嗅覚障害、味覚障害が挙げられ、耳鼻咽喉科には後遺症の患者さんの相談が増えました。味覚障害の後遺症は半年くらい続く方もおられます。
味覚障害とは、「何を食べても味がわからない」「料理の味が薄く感じられる」「作った料理が濃すぎると、人に言われた」など。知らず知らずのうちに症状が進行し、気がついた時にはかなり症状が進んでいるということも少なくありません。
特に、最近では10代・20代という若い世代でも味覚障害を訴える人が増えているのです。
味覚障害の症状は大きく分けて5つあります。
- 味覚減退・味覚消失
味の感じ方が鈍くなったり、味を感じなくなったりする
- 異味症
本当は甘いのに、苦く感じるなど、実際とは異なる味を感じる
- 自発性異常味覚
口の中に何もないのに苦味や渋みなどを感じる
- 解離性味覚障害
ある特定の味(甘味など)がわからない
- 悪味症
何を食べてもいやな味になる
味が濃い食材の過剰摂取や、タバコの吸いすぎなど。しかし一番の原因は…
味覚障害の原因はインプットにあるのか、アウトプットにあるのかで治療法も変わります。
味覚障害を引き起こす原因として、味が濃い食材の過剰摂取や、タバコの吸いすぎなどもありますが、一番の原因といわれているのが必須ミネラルである亜鉛の不足です。
味覚を感じるのは、舌の表面にあるポチポチした部分、味蕾(みらい)という文字通り花の蕾(つぼみ)の形をした微小な感覚器官です。味蕾という細胞は、短い周期で新しく生まれ変わっており、その生まれ変わりにはたくさんの亜鉛を必要とします。つまり、亜鉛が不足すると細胞が生まれ変われなくなってしまい、味覚障害を引き起こしてしまうのです。これが「インプット」の方の問題です。
他にも加齢、貧血、シェーグレン症候群、カンジダ症、がん治療、歯周病、心因性、降圧剤、抗生剤などの薬剤性など、原因は複数考えられます。