神経になんらかの異常が生じている可能性
味覚の刺激を伝えるのは幾つかの神経です。味覚の支配神経は下記のように分かれています。
- 舌の前2/3:【顔面神経(鼓索神経)】甘味、塩味、酸味を主に感じる
- 舌の後1/3:【舌咽神経】苦味
- 軟口蓋 :【大錐体神経】甘味
これらの神経になんらかの異常が生じると味覚異常が生じ、味覚低下が認められることとなります。
さらに受け取る側の「脳内の異常」でも、味覚障害が生じます。これは「アウトプット」の問題で、脳腫瘍、外傷・手術等の合併によって認められます。しかし、ほとんどの味覚異常は末梢性(インプット)で、味の伝達を行う味蕾の減少・萎縮、唾液分泌の低下により生じます。
嗅覚と味覚の密接な関係性
さらに、味覚は嗅覚と密接に結びついています。舌の味蕾(みらい)は味を識別し、鼻の神経は匂いをかぎ分け、それらはともに脳へと伝達され、脳がその情報を統合することにより風味として認識し、味わうことができるのです。
塩味、苦味、甘味、酸味など一部の味覚は、嗅覚がなくても認識できます。しかし、甘酢っぽい、甘じょっぱい、風味豊かなものなどは、味覚と嗅覚の両方が認識される必要があります。
つまり、鼻が悪いと味音痴になるわけです。わさびが辛いと鼻をつまむのは、理にかなった昔からの教えですね。
味覚の検査:電流、神経を賦活させる薬など…
味覚がおかしい、と感じたとき、検査方法としては幾つかあります。
1.採血により亜鉛の血中濃度を調べる(開業医レベルで簡単にできます)
2.味覚検査(大きな病院でしかできません)
味覚の検査は、4つの味を種々の濃度でしみ込ませたろ紙を舌の上に置き、各々の味に対する味覚障害の程度を調べます。
3.電気味覚検査(大きな病院でしかできません)
電気味覚計により障害の程度が測定できます。微かな電気刺激で金属味が生ずることを利用したもので、舌の上に電極をあて電流の強さを変えて測ります。
味覚のインプットの問題では、原因を見つけそこを補うという治療法になります。亜鉛を含んだ胃薬があるので、私はよくそれを処方しています。また味覚のアウトプットの問題の方では、神経を賦活させる薬などを使いますが、時間が経てば経つほど中々治りづらくなる方法でもあります。