(※写真はイメージです/PIXTA)

舌癌、口腔底癌、中咽頭癌、鼻腔癌、外耳道(側頭骨)癌などは、「唯一肉眼で見えうる癌」と言われています。これまで20年以上に渡り人々の耳を見続け、海外でも診療をしてきた馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・木村至信医師に、実際に耳鼻咽喉科で見つかった癌の病例、また経済的側面から見た「癌」について解説いただきます。

癌の進行具合で違ってくるのは「“命”の生存率」だけではない

癌イコール死ぬ。そういう時代は終わりつつあるように感じます。以前海外の医学博士のコラムで、「人類の敵はいずれ癌ではなく、ウイルスになるだろう」という内容のものを読みましたが、確かにそうなりつつあるなと感じる今日までの3年間でした。

 

それでも膵臓癌や肝臓癌など、病状が進まないと症状が出にくい癌もありますし、前立腺癌のように採血でわかる癌もあります。やはり定期的な胃カメラ、大腸ファイバー、採血などは必要と感じますし、人間ドックでPETという全身の癌を調べる検査も必要なのかもしれません。

 

というのも、癌の種類にもよりますが、癌は見つかった段階での進行具合で、5年生存率が大きく違うのです。癌を恐れるのではなく、進行癌を恐れなければいけないのです。それは「命の生存率」という意味でもそうですが、「経済面での生存率」という点においても同様で、最初の進行具合で格段に違ってきます。

 

初期であれば抗がん剤や放射線治療で、およそ3ヵ月の療養で実生活に戻れます。進行癌であれば、入院手術、そこからの抗がん剤、放射線、体力が戻ってからの実生活復帰まで、おそらく半年は必要になります。しかも再発の可能性も高いので定期的な診察も必要です。

 

例えば年収が600万円だとして、大体300万円ほどの稼ぎがなくなると考えられます。そこまで補ってくれる保険はないですし、治療費はおりたとしても、お見舞い、交通費なども含め、100万円はなんだかんだ必要と考えてよいかと思います。つまり年収の2/3近くがごそっとなくなるのです。これからも働いて、食べて、生きていくことを考えれば、癌は初期で見つけなければいけないのです。

唯一肉眼で見られる「癌の顔つき」。実際の病例

私が専門とする耳鼻咽喉科の癌は全身の中で、唯一肉眼で見られる癌が多いです。見えるからこそ、耳鼻咽喉科では初期で見つけなければいけないと私は思っていて、喫煙歴のある方、不規則な食生活や飲酒、肥満などリスクファクターの多い方、癌家系の方には、年に二回は最低でも顔を出してとお願いしています。今回は実際にあった症例をお伝えしながら、2つ大事なことをお話させていただきます。

 

患者さんは50代の男性。健康に自信がある方でした。目頭から膿が出ると近所の眼科医を受診し、抗生剤を何度も投与され不定期に3ヵ月通院、その後目頭の下の部分が破裂し、それでもまた別の眼科で抗生剤をもらって、皮膚科にも行ったりして、激痛にも我慢していました。医療従事者の娘さんがいらしたにも関わらず、これはよくあるのですが、自分のことは相談しにくいもので、ご相談されずに放置していました。

 

最近とくに鼻もつまるので耳鼻咽喉科にも行ってみるか、という軽い気持ちで当院にいらっしゃいました。発症から半年以上が経っていました。

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